要旨
本研究の目的は、ハーディネスと自己充実的達成動機、方略・失敗活用志向、失敗恐怖との関連を検討すること、またハーディネスと多面的楽観性の関連を明らかにすることである。そして以上の内容で関連が明らかになった場合、それぞれの概念の組み合わせによって、失敗に対する認知にどのように影響するかも検討した。
その結果ハーディネスは自己充実的達成動機を高める要因になっている可能性が示唆された。また、多面的楽観性の肯定的期待概念がハーディネスに対して強い影響力を持っていることが示された。未来に対してポジティブな期待をもつことは、ハーディネス獲得には重要な鍵になることが示唆された。 3 要因分散分析 ハーディネス(高群・低群)と肯定的期待(高群・低群)と自己充実的達成動機(高群・低群)を独立変数、方略・失敗活用志向と失敗恐怖を従属変数とした、3×2 の分散分析を行った。ハーディネスは失敗に対する認知、特に失敗恐怖に対して間接的に影響をもたらすといえる。ハーディネスを高めることは、自己充実的達成動機を高める要因になり、それが失敗に対する認知を肯定的なものと捉えることにつながる。また肯定的期待とハーディネスを持ち合わせることによって失敗への恐怖心を低減できることから、ハーディネス獲得は失敗を恐れない挑戦へのスタート地点とも言えるかもしれない。
ハーディネスが自己充実的達成動機のような意欲を喚起するものであり、自己充実的達成動機が方略・失敗活用志向を高め、つまり失敗に対して柔軟な思考をもつことにつながり、意欲の低下を阻止できるといえる。間接的に働くとはいえ、失敗に対する柔軟な思考への第一歩としてハーディネス獲得は必要であるといえる。そしてハーディネスという精緻化されていなかった概念が、楽観性の下位概念である肯定的期待という概念が大きな鍵となることが明らかとなり、ハーディネス獲得には、肯定的な期待を持ちながら日々を過ごすように意識することで徐々に獲得されていくのではないかということが示唆された。