1.本研究の今後の課題
本研究の今後の課題として以下の3点が挙げられる。
まず1点目は、質問項目が多く、過去の経験を想起しながら回答を行わなければならないため、調査対象者にとって負担が大きかったという点である。そのため、回答時の疲れや回答に対する飽きによって回答の信頼性が下がっている可能性が否めない。時間に縛られることなく回答してもらうために持ち帰って回答するように依頼したが、負担の大きさからか回収できなかった質問紙も多かった。このような問題点を解決するために、質問紙の尋ね方を変更する等、質問紙の構成の仕方を工夫するべきであろう。例えば、本研究では分析時に経験数の少なかった一部の項目について削除を行ったが、これを先に行い、少しでも項目数を削減する等の工夫が必要であると考える。
2点目は、経験の種類ではなく経験数も同時に調査すべきであったという点である。本研究では、援助要請行動・被援助・援助行動それぞれに対して、種類ごとに経験があるのかについて問うかたちで質問紙調査を行ったが、その項目について一度だけではなく複数回の経験を行っている場合があっても、それを測ることができない内容であった。そのため、経験の種類は少なくとも、その少ない経験の種類の中で何度も経験を行っていたとしてもそれを結果に反映することができなかった。よって、今後研究を行う際には援助要請行動・被援助・援助行動の種類だけではなく、経験回数も問う必要があると考える。
3点目は、援助要請行動(被援助行動)と援助行動のどちらを先に経験しており、次の援助要請行動(被援助行動)・援助行動に影響を及ぼしているのかについて、正確に測ることができなかったという点である。これについては、援助要請行動と援助行動は相互作用を持つ行動であるため、正確にこれを質問紙調査で明らかにすることは難しい。このことは課題として残っているといえる。
2.本研究の展望
本研究は、援助経験が援助要請行動に及ぼす影響について検討を行った。
人は、生活してゆくなかで直面する問題に対して、全てを一人きりで解決しているわけではなく、多くの人との相互作用によって問題解決を行っている。本研究の、「援助行動をたくさんすることが、自らの援助要請行動に繋がるのではないか」という考察は、これまでの様々な研究で言われている「援助要請をすることに対して抵抗を感じる要因が様々ある」という結果のなかで、援助要請行動を促進するための一考察であるといえる。
また、本研究では一部しか明らかにできなかった「援助経験が援助要請行動に及ぼす影響」について、今後の研究でさらに様々な観点から明らかにされることで、援助要請をしたくてもなかなかできない人にとって、問題解決に資する研究になるのではないかと思う。普段、問題に直面して誰かに助けを求めたいというときに、援助を要請することができないという人は、世の中にいるはずである。そのような人にとって「援助を要請したいのだけれどできない」という複雑な心理はごく一般的にあることであり、援助要請行動を行うことに抵抗がある人が援助要請行動を積極的に行うための一つのきっかけ・解決案として他者を助ける援助行動があれば、人々が互いに支え・助け合う優しい社会になるのではないだろうか。そのような優しさの溢れる社会になることを強く望んでいる。