研究2結果
【研究2結果】




1.α係数

 質問紙で用いた尺度について、先行研究の尺度構成に従って各項目を合計し、それぞれの平均値を算出して、各下位尺度得点とした。下位尺度得点のCronbachのα係数をTable に示す。 なお、先行研究を参考に作成した項目においても、その参考にした先行研究の尺度構成に従って各項目を合計し、それぞれの平均値を算出して、各下位尺度得点とした。

Table 10 各下位尺度得点のCronbachのα係数

 協同学習場面における社会的動機づけ尺度(中西ら, 印刷中)の【グループに対する貢献動機】については、α係数が低かったため、「6. グループの人が頑張っていないので自分も頑張りたくないと思う」の1項目抜いた3項目で分析を行った。


2. 得点の平均値の違いに関する検討

 事前質問紙(pre)と事後質問紙(post)で扱った尺度である、多面的感情状態尺度の4下位尺度とグループワークでの発話抵抗感を測定する項目の2下位尺度については、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行った。 事後質問紙でしか扱わなかった尺度については、下位尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。


2-1. 多面的感情状態尺度の平均値の違いに関する検討

 多面的感情状態尺度短縮版(寺崎ら, 1992)の【活動的快】【非活動的快】【抑うつ・不安】【倦怠】の4下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行い、検討した。(Table 11) 4下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行った結果、【活動的快】についてpre/postの主効果がF=(1,21)=6.39, p< .05で有意であった。 【抑うつ・不安】についてpre/postの主効果がF=(1,21)=13.18, p< .01で有意であった。 【倦怠】についてpre/postの主効果がF=(1,21)=11.52, p< .01で有意であった。 また、【活動的快】については、群の主効果がF=(1,21)=3.04, p< 1.0で有意傾向であった。

Table 11 多面的感情状態尺度短縮版の各下位尺度の平均値と標準偏差、 主効果と交互作用

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、4下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行い、検討した。 4下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行った結果、【活動的快】について、群の主効果がF=(1,18)=4.49, p< .05で有意であった。【抑うつ・不安】について、pre/postの主効果がF=(1,18)=10.94, p< .01で有意であった。【倦怠】についてF=(1,18)=8.31, p< .05で有意であった。

Table 12 グループ3を除く5グループにおける多面的感情状態尺度短縮版の 各下位尺度の平均値と標準偏差、主効果と交互作用


2-2. 発話抵抗感に関する検討

 作成した発話抵抗感を測定する項目の【発話不安】【発話回避】の2下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行い、検討した。(Table) 2下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行った結果、preとpost、実験群と統制群で有意な差はみられなかった。

Table 13 発話抵抗感を測定する項目の各下位尺度の平均値と標準偏差、主効果と交互作用

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、2下位尺度について、下位尺度ごとでpreとpost、実験群と統制群で2要因分散分析混合計画を行い、検討したが、全グループにおける検討の結果と同様、有意な差はみられなかった。

Table 14 グループ3を除く5グループにおける発話抵抗感を測定する項目の 各下位尺度の平均値と標準偏差、主効果と交互作用


2-3. 協同学習場面における社会的動機づけ尺度の平均値の違いに関する検討

 協同学習場面における社会的動機づけ尺度について、下位尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table15) 下位尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、どの下位尺度においても実験群と統制群の平均値に有意な差は見られなかった。研究1の社会的動機づけについてのWelchの方法による平均値の差の検討の【他者からの刺激による動機づけ】【グループに対する貢献動機】で統制群が実験群よりも有意に高かったという結果とは異なる結果となった。しかし、研究1の結果と同様に、有意ではないが、【他者からの刺激による動機づけ】【グループに対する貢献動機】で統制群が実験群よりも平均値は高かった。

Table 15 協同学習場面における社会的動機づけ尺度の各下位尺度の平均値と標準偏差、 およびt値

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、下位尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、全グループにおける検討の結果と同様、有意な差はみられなかった。しかし、この結果でも、有意ではないが、【他者からの刺激による動機づけ】【グループに対する貢献動機】で統制群が実験群よりも平均値は高かった。

Table 16 グループ3を除く5グループにおける協同学習場面における社会的動機づけ 尺度の各下位尺度の平均値と標準偏差、およびt値


2-4. 学習意欲と課題追求の平均値の差に関する検討

学習意欲の【楽しさ・おもしろさ】と【課題追求】について、尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table 17) 尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、どの下位尺度においても実験群と統制群の平均値に有意な差は見られなかった。

Table 17 【楽しさ・おもしろさ】【課題追求】の平均値と標準偏差、およびt値

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、全グループにおける検討の結果と同様、有意な差はみられなかった。

Table 18 グループ3を除く5グループにおける【楽しさ・おもしろさ】【課題追求】の 平均値と標準偏差、およびt値



2-5. 会話の印象の平均値の差に関する検討
 「会話に対する印象」尺度(小川, 2000)について、平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table19) 平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、t(20.75)=2.24, p < .05で統制群の方が実験群より有意に高かった。

Table 19 【会話の印象】の平均値と標準偏差、およびt値

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、有意な差はみられなかったが、全グループにおける検討と同様、統制群の方が実験群よりも高かった。

Table 20 グループ3を除く5グループにおける【楽しさ・おもしろさ】【課題追求】の 平均値と標準偏差、およびt値



2-6. 積極的参加の平均値の差に関する検討
 西村(2013)のルーブリックの【グループへの参加】【他のメンバーの受容】【自己主張】【議論を深めるための質問】【結論の掘り下げ】の5項目について、項目ごとに平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table 21) 項目ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、【結論の掘り下げ】について、t(19.31)=2.15, p< .05で統制群の方が実験群より有意に高かった。

Table 21 【積極的参加】の各項目の平均値と標準偏差、およびt値

 また、3人で構成されたグループであった統制群(グループ3)を1群除いて、尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、t(12.19)=1.88, p< 1.0で有意傾向であった。

Table 22 グループ3を除く5グループにおける【積極的参加】の各項目の 平均値と標準偏差、およびt値



3. 発話分析
 研究1の発話分析と同様に、実験群と統制群でのグループワーク中のコミュニケーション行動の頻度や、「笑い」というポジティブ感情の表出、グループワークに対する参加態度の違いについて検討するため、グループワーク中の発話データを音声レコーダーと映像をもとに文字起こしし、グループワーク中の総発話数、沈黙回数について実験群と統制群で比較した。 また、認知的な思考の柔軟さや深まりについて検討するため、挙がったアイディア数も併せて計測し、検討した。 発話数については「基本的な文字化の原則(Basic Transcription System for Japanese: BTSJ)」の手順を参考に、1つの発話文を1発話としてカウントし、算出した。また、本研究では、これに加え、発話途中に発せられた、文章の伴わない他者による短い相槌、笑い、も1発話としてカウントし、総発話数の中に含んだ。(沈黙時間の計測については、3秒以上の沈黙を1単位として沈黙回数を計測した。 笑いが生じた発話を「笑い生起」の回数としてカウントし計測した。 グループワーク中に出てきたアイディアの数を計測した。このアイディア数については、重複したものは除いて計測した。 なお、この発話分析は4人ずつで構成された4グループを対象とし、3人で構成されていた統制群(グループ3)の1群を除いて分析を行った。 発話分析の結果をTable 23に示す。

Table 23 各グループにおける総発話数、沈黙数、笑いの生起回数、アイディア数

発話分析の結果、どのグループにおいても実験群の方がアイディア数が多かった。



4. 第3者によるグループワークの様子・印象・雰囲気の評価
4-1. 概要
 研究2で行った実験のグループワークの様子を撮影した映像を、本実験の内容を細かく知らない、学習心理学についての専門知識をもった第3者2名に見てもらい、グループワークの客観的評価についての質問紙の回答を求めた。質問紙回答は評価者一人ずつ行った。評価するグループの映像の順番は、カウンターバランスをとるために、評価者1には「グループ1(実験群)→グループ3(統制群)→グループ2(実験群)→グループ4(統制群)→グループ6(実験群)→グループ5(統制群)」の順番で評価を求め、評価者2にはこの順番の逆から、評価を求めた。


4-2. 質問紙の構成

T.グループワークの様子や取り組む態度を客観的に評価するための項目について、9項目作成し、使用した。「このグループワークについて、以下の項目にある様子がどれほど見られたか、最もあてはまる数字に○をつけてください。」という教示文で、回答形式は「1まったく見られなかった」から「4よくみられた」の4件法であった。
U.グループワークの印象を客観的に評価するための項目として、「会話に対する印象」尺度(小川, 2000)を参考に5項目作成し、使用した。「このグループワークの印象を、以下の各項目について、最もあてはまると思う数字に○をつけてください。」という教示文で、7段階で評価を求めた。
V.グループワークの全体的な雰囲気について客観的に評価してもらうため、「このグループワークの雰囲気について、最もあてはまると思う数字に○をつけてください。またそう感じた理由も以下の枠内に記入してください。」と教示し、「1全くよくない」から「7非常によい」の7段階で評価を求めた後、そう感じた理由についても記述を求めた。



4-3. 客観的グループワーク評価について平均値の差の検討
 第3者による客観的グループワーク評価の質問紙で使用した尺度、項目について、平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。 グループワークの様子や取り組む態度を客観的に評価するための項目については、項目ごとに平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table 24)その際、「9.課題や議論に対するネガティブな発言」については、両グループの標準偏差が0であったため、分析から除外した。 項目ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、有意な差はみられなかった。

Table 24 グループワークの様子や取り組む態度を客観的に評価するための項目についての各項目の平均値と標準偏差、およびt値

 また、グループワークの印象を客観的に評価するための項目、グループワークの全体的な雰囲気についての客観的な評価についても尺度ごとに平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った。(Table 25) 尺度ごとで平均値を算出し、Welchの方法を用いて、実験群と統制群の平均値の差の検定を行った結果、有意な差はみられなかった。 しかし、これら第3者によるグループワークの印象・雰囲気の評価は、有意ではないが、統制群の方が実験群よりも平均値が高いという点で、被験者の質問紙で行った【会話の印象】の検討の結果と対応していた。

Table 24 グループワークの印象を客観的に評価するための項目、グループワークの全体的な雰囲気についての客観的な評価についての平均値と標準偏差、およびt値








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