2.本実験



【参加者と実験計画】

 大学生25名が実験に参加した。参加者は、事前調査で行った質問紙に実験協力のお願いを付し、そこで同意が得られた者とした。参加者は抑うつ傾向高低群の参加者1要因計画であり、参加者は構造化開示群、非客観視群の2条件に無作為配置された。構造化開示群と非客観視群の協力者は、連続した3日間の筆記課題を行った。筆記の前後には現在の気分に関する質問紙に回答をした。

実施時期:2014年11月下旬から12月上旬まで、連続した3日間


【手続き】

1.実験・質問紙の説明

○構造化開示群 
 構造化開示群に割り当てられた協力者は、実験に関する質問用紙、日頃の日記に関する質問紙、3日分の筆記課題を記録する用紙と、毎回の筆記課題前後に行う質問紙を受けとった。3日間の筆記課題は自宅など1人きりになれる場所で行った。

構造化開示群に対する教示文
「今日あったいやな出来事について、あなたが見たこと、聞いたこと、考えたことを書いてみましょう。そこから、あなたの親友があなたと同じような経験をし、あなたと同じようにネガティブな考えをしている場合、どのようなアドバイスをするか、書いてみましょう。そして、最初に書いた自分の体験に対して、今どのように考えることができるか、書いてみましょう。」


※協力者は教示に従い、今日1日にあったネガティブな出来事について、3日間連続で筆記課題を行った。3日間には、それぞれその日にあったネガティブな出来事について筆記し、3回の日記に同じ出来事が書かれることはないようにした。なお、ネガティブな出来事がなかった場合は筆記を行わなくてもよいと教示を行った。

○非客観視群
 教示文以外の実験内容については、構造化開示群と同様である。

非客観視群に対する教示文
「今日あったいやな出来事について、あなたが見たこと、聞いたこと、考えたことを書いてみましょう。そして、最初に書いた自分の体験に対して、今どのように考えることができるか、書いてみましょう。」


2.普段の日記行動に関する質問
 普段日記を行っているか(以下日記有無とする)、その頻度、内容を尋ねた。また、文字を介して感情を外に出す機会をもっているか(SNS、ブログなど:以下発散機会とする。)を尋ねた。

3.気分得点を測定するために筆記の前後に評定(6項目)
 日本語版IPANAT(Quirin, Kazen, & Kuhl, 2009;下田・大久保・小林・佐藤・北村, 2014)で用いられた感情語6項目。ポジティブ感情語として“楽しい”,“元気な”,“幸せな”の3 項目、ネガティブ感情語として“憂うつな”,“無力な”,“緊張した”の3 項目とした。各項目に対して、1(全くあてはまらない)〜4(とてもあてはまる)までの4 件法で評定。表4に各項目を付記した。


4.認知的再体制化(3項目)
 筆記した出来事やその出来事と関連する感情や考えに関してどのような変化があったかを、“その出来事についての見方がより肯定的になった”、“自分の人生に対する見方がより肯定的になった”、“その出来事を自分の人生の中に統合できるようになった”の3項目について、1(全くそう思わない)〜7(全くそう思う)までの7件法で1日の筆記を終えた後に評定。表5に各項目を付記した。