5.各筆記群と男女におけるCR得点
筆記群と性差による認知的再体制化の促進の違いについて検討する。
構造化開示群においては女性のCR得点が男性と比較して有意に高く、非客観視群においては男性のCR得点が女性と比較して有意に高かった。島津(2005)によれば、女性は男性よりも他者や自分への言語表出をより多く用いており、Tamresら(2002)の研究から、ストレスフルな状況におかれた場合、女性は男性と比較してより多くの行動や思考に従事することによって、その状況を処理するとされている。
また加藤(1999)は、苦しくてつらいことが起こった場面において、男性は女性と比較して有意に問題に対して冷静に判断したり計画的な行動をとったりすることを明らかにした。守屋(2003)は、女性は男性に比べ、原因に働きかけて問題を解決する「根本的解決」より、問題そのものではなく自分の解釈を変えて解決する「再解釈」を選ぶ傾向が顕著であるとしている。男性と女性にはストレスフルな出来事への対処行動に違いがあることが示唆されており、認知的再体制化の促進方法にも性差がみられる可能性がある。
本研究の結果からは、筆記群と性差から認知的再体制化の促進に違いがみられ、男性は女性と比較してより少ない思考で出来事の捉え直しを行うことができる可能性が示唆された。