1.日記の概観
日記は日々の記録を綴るもので、その内容は日常生活での出来事、食事の記録、今日あった良いこと、未来の目標など様々である。
日記を行うことによって自身が経験した出来事を保存し、日記を見返すことで再度思い出すこともできる。
佐々木(1994)による調査では、青年が行う日記に対して、自分の書きたいことを自由に書く態度がみられ、抑えきれない否定的な気持ちを吐き出すことで気持ちがすっきりする、抑えきれない肯定的な気持ちを記すことで気持ちを追体験できる、自身の意見や思想を書くことによって整理し、新たな気づきを得られるといった効果が示されている。
そして、これらの日記は古来より世界中に存在している。
紀(2014)の日頃の自己表現に関する筆記行動に対する調査によれば、有効回答数109名(男性44名・女性82名 平均年齢21.28(SD=4.21)歳)に対し、自己表現を目的としてアナログ方式だけでなくデジタルも含めた筆記行動を行っている者は86名(78.90%)であることが示されている(図1)。このことから、多くの人々が文字を介して自己表現を行っていることが分かる。
福田・三浦(2013)は、日記とは「自己開示の一形態」であると述べている。
自己開示とは、「自己に関連する新奇な、通常はプライベートな情報を、一人あるいはそれ以上の他者に、正しく、誠実に、意図的に伝達する言語行動」と定義されており(安藤, 1986 ; Fisher, 1984)、感情をはき出すことで浄化したり、話すうちに自分の態度や意見が明確にまとまったり、自分の能力や意見の妥当性を評価できたりする。
畑中(2006)は自己開示をする人ほど一般的に精神的健康度が高いと解釈されると述べており、自己開示は精神的健康に大きく影響しているといえる。
故に、自己開示を行うことのできる日記を書くことは精神的健康につながると考えることができる。