1.本研究で明らかになったこと

 本研究は、構造化開示法を日記に取り入れることにより、ネガティブに感じている出来事の捉えを変化させ、ネガティブな気分を軽減し、気分を良くすることができるかについて、抑うつの傾向高低による効果の変化も含めて検討することが目的であった。現代社会はストレス社会と言われ、他の誰かに悩みを打ち明けることができない、また病院やカウンセラーにかかることにも抵抗を感じる人々の存在を知り、自分ひとりでストレスに立ち向かうことのできる、誰にでも取りかかりやすい方法を明らかにしたいと考え、本研究にいたった。

 本研究では構造化開示群と非客観視群を設定し、実験を行ったが、構造化開示群及び非客観視群が行った筆記によって気分を良くすることはできなかった。抑うつ傾向を加味すると、統計的には有意ではないが非客観視群の抑うつ傾向低群で気分の向上がみられた。
 本研究において、健常な大学生が行う筆記開示に関して、客観視を行う段階を省略しても気分を向上させる効果があることが推測される。
 また筆記開示には抑うつ傾向が関連していることが明らかとなり、診断として表れていない場合で、筆記開示の効果を検討する際には抑うつ傾向を把握しておく必要性があることが示唆できる。