2.筆記開示研究への貢献

 これまでの筆記開示研究では、トラウマ経験をテーマとしているものが多く、日常でのネガティブな出来事に焦点をあてた研究は数少なかった。ストレス社会と言われる現代で、日々ストレスと向き合って対処していくことは重要であると考える。本研究ではその日あったネガティブな出来事に対して筆記開示を行うことによって気分が向上する可能性を示唆することができたと考える。

 また認知的再体制化には、その効果的な促進方法に性差がある可能性が示唆された。筆記開示研究では女性の実験協力者が多く(織田・堀毛・松岡, 2009 ; 佐藤, 2012 ; 関谷・湯川, 2012)、本研究でも女性の実験協力者が多かった。男性は女性と比較して文字を書くことを好まないのではないかと推測する。
 先述のように守屋(2003)は、女性は男性に比べ、問題そのものではなく自分の解釈を変えて解決する「再解釈」を選ぶ傾向が顕著であると述べており、男性と比較して女性が筆記開示における認知的再体制化によって、ストレス低減効果を得ることができると推測する。

 以上より本研究では、ネガティブな出来事を処理する際の思考に性差があるという結果を筆記開示研究に取り入れ、今後研究していく価値があることを示すことができたと考える。