要旨




 本研究では、精神症状に効果があるとされている認知的再体制化の促進を意図して作成された構造化開示法を日記に取り入れることにより、ネガティブに感じている出来事の捉えを変化させ、ネガティブな気分を軽減し、気分を良くすることができるかについて検討した。
 その際、個人差統制変数として抑うつ得点を測定し、抑うつ傾向高群と低群を設定し、それぞれによる効果の変化について検討を行った。

 本実験において、実験協力者は構造化開示群と非客観視群に割り当てられ、「その日にあったネガティブな出来事」をテーマとした筆記開示を行い、筆記前後に感情状態、筆記後に認知的再体制化がどの程度促進されたかの測定を行った。その結果、筆記開示の効果を検証するにあたり、抑うつ傾向及び性別が重要な要因であることが確認された。

 非客観視群に割り当てられた抑うつ傾向低群において、筆記開示による気分得点の増加が示された。

 これまでの筆記開示研究では、トラウマ経験をテーマとしているものが多く、日常でのネガティブな出来事に焦点をあてた研究は数少なかった。ストレス社会と言われる現代で、日々ストレスと向き合って対処していくことは重要であると考える。
本研究ではその日あったネガティブな出来事に対して筆記開示を行うことによって気分が向上する可能性を示唆することができたと考える。

 また、筆記開示の効果には性差があることが示され、男性は女性と比較してより少ない思考で出来事の捉え直しを行うことができる可能性が示唆された。