要旨
本研究の目的は、友人関係と対人依存欲求が、ひとりで過ごすことに関する感情・評価にどういった影響を及ぼしているのか、そして、対人依存欲求が友人関係にどういった影響を及ぼしているのか、について検討することであった。この結果として、表面的関係を築く者は、ひとりの時間に孤独感や不安感を抱き、内面的関係を築く者は、ひとりの時間に充実感や満足感を抱く傾向が見られた。また、対人依存欲求の情緒的依存は、ひとりの時間に孤独感や不安感を抱くことに影響を与え、内面的関係と表面的関係に影響を与えていることが明らかとなった。この結果から、内面的関係・表面的関係共に高い人は、「充実・満足」が高いだろう、内面的関係が高い人は「自立・理想」が高いだろう、という仮説1,2は支持されなかったが、表面的関係が低い人は、「孤独・不安」が高いだろう、対人依存欲求の「情緒的依存」が高い人は、「内面的関係」が高いだろう、対人依存欲求が高い人は、「孤独・不安」が高いだろう、という仮説3,4,5は支持された。この結果から、表面的友人関係を築いている者は、自身の友人関係に不安感や恐怖感があるため、一人の時間に対しても孤独感や不安感を抱くことが明らかとなった。また、対人依存欲求の情緒的依存欲求は、友人関係を築く上で必要不可欠な要因であることが示唆された。しかし一方で、他者と関わることのできないひとりの時間、という観点においては、情緒的依存欲求は孤独感や不安感をあおっていることが示された。さらに、青年期における友人関係である内面的友人関係と表面的友人関係は、ひとりで過ごすことに関する感情・評価に影響を及ぼしていないことが明らかとなった。今後、一人の時間に充実感や満足感を抱くことに影響を与えている要因を検討していく必要があるだろう。