結果

恋人との葛藤について回答していた者88名(男性34名、女性54名)、異性友人との葛藤について回答していた者125名(男性54名、女性71名)、それぞれについて分析を進めた。以下、恋人との葛藤について回答していた者を恋人群、異性友人との葛藤について回答していた者を異性友人群とする。恋人との葛藤、異性友人との葛藤どちらにも回答していた者は恋人群、異性友人群どちらにも該当したが、それぞれ別の回答として扱い、被験者間分析として進めた。葛藤重大度は、葛藤の原因が自分にとって重要であったかという項目を「葛藤重大度自分」、相手にとって重要だったと思うかという項目を「葛藤重大度相手」として、それぞれ別の下位尺度として扱った。

1.男女差のt検定

 男女差の検討を行うために、恋人群、異性友人群それぞれにおいて性別ごとの各下位尺度の尺度得点と標準偏差を算出し、全ての下位尺度得点についてt検定を行った。恋人群では男女差がみられず、異性友人群では対人葛藤対処方略尺度の中の「回避」因子においてのみ、男性より女性の方が有意に高い得点を示した(t(125)=-2.38,p=.05)。

2.関係性認知、葛藤重大度、対人葛藤対処方略、ならびに対人葛藤結果についての影響関係の検討

2-1.関係性認知が対人葛藤対処方略に及ぼす影響

 関係性認知が対人葛藤対処方略に及ぼす影響を検討するために、関係性認知の4下位尺度を独立変数、対人葛藤対処方略の4下位尺度をそれぞれ従属変数として重回帰分析を行った。
 恋人群においては、関係性認知から「攻撃」への影響は有意な結果がみられなかった。「譲歩」、「対話」、「回避」ともに関係性認知の「重要性」が影響をおよぼしていた。「重要性」が「譲歩」(β=.350, p<.05)と「対話」(β=.403, p<.01)には正の影響を、「回避」(β=-.475, p<.001)には負の影響をおよぼしていることがわかった。
 異性友人群においては関係性認知から対人葛藤対処方略の「譲歩」と「攻撃」への影響は有意な結果がみられなかった。関係性認知の「重要性」が「対話」に弱い正の影響(β=.215, p<.05)を、「不確実性」が「回避」に弱い正の影響(β=.246, p<.05)をおよぼしていることが明らかになった。

2-2.葛藤重大度が対人葛藤対処方略に及ぼす影響

 葛藤重大度が対人葛藤対処方略に及ぼす影響を検討するために、葛藤重大度として扱った2下位尺度を独立変数、対人葛藤対処方略の4下位尺度をそれぞれ従属変数として重回帰分析を行った。
 恋人群では、対人葛藤対処方略の「攻撃」と「回避」において葛藤重大度からの影響はみられなかった。また、葛藤重大度の「葛藤重大度相手」も対人葛藤対処方略には影響をおよぼしていないことがわかった。「葛藤重大度自分」は「譲歩」に弱い負の影響(β=-.295, p<.01)を、「対話」に弱い正の影響(β=.239, p<.05)をおよぼしていることがわかった。
 異性友人群では、対人葛藤対処方略の「譲歩」と「攻撃」において葛藤重大度からの影響はみられなかった。葛藤重大度の「葛藤重大度自分」が対人葛藤対処方略の「対話」に弱い正の影響(β=.204, p<.05)を、「回避」に正の影響(β=.313, p<.01)をおよぼしていることがわかった。「葛藤重大度相手」においては、対人葛藤対処方略の「回避」に弱い負の影響(β=-.236, p<.05)をおよぼしていることがわかった。

2-3.対人葛藤対処方略が対人葛藤結果に及ぼす影響

 対人葛藤対処方略が対人葛藤結果に及ぼす影響を検討するために、対人葛藤対処方略の4下位尺度を独立変数、対人葛藤結果の2下位尺度をそれぞれ従属変数として重回帰分析を行った。
 恋人群では対人葛藤対処方略の「回避」が「ネガティブ変化」に正の影響(β=.699, p<.001)をおよぼしていることがわかった。その他の下位尺度は「ネガティブ変化」に影響をおよぼしていなかった。また対人葛藤対処方略の「対話」が「ポジティブ変化」に正の影響(β=.333, p<.01)を、「回避」が弱い負の影響(β=-.261, p<.05)をおよぼしていることがわかった。
 異性友人群では対人葛藤対処方略の「譲歩」(β=.202 p<.05)と「回避」(β=.537, p<.001)がネガティブ変化に正の影響をおよぼしていることがわかった。また「対話」がポジティブ変化に正の影響(β=.425, p<.001)を、「回避」が弱い負の影響(β=-.203, p<.05)をおよぼしていることがわかった。

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