3. 空想と神経症傾向
空想傾性とはウィルソンとハーバーによって定義された「時間の多くを自分で作り上げた世界、すなわちイメージと想像と空想の世界の中で生きる」少数グループの人たちの特徴である(松岡,2010)。
空想傾性の強さには、病理性をもたらすネガティブな働きと生産的で創造的な体験をもたらすポジティブな働きがあり、
空想傾性がネガティブ・ポジティブどちらに結び付くかは、性格特性、想像・空想経験のコントロール、状況への対処の仕方などによって異なってくると松岡(2010)は述べている。
松岡・岡田(2005)は、大学生を対象に、空想傾向の高さがウェルビーイングに及ぼす効果について検討し、神経症傾向(情緒安定性)が空想傾性のポジティブ・ネガティブな方向性を左右する重要な媒介要因であることを見出している。
このように、神経症傾向(情緒安定性)といった性格特性は、空想に対して大きな影響を与えていると考えられる。
そこで、本研究では空想に影響を与える性格特性として自己志向的完全主義に注目する。
自己志向的完全主義とは、自己に対して完全性を求めることであり(Hewitt,1991b)、不適応との関係が取り上げられているため(Hewitt,1991a)、神経症傾向(情緒安定性)との関連が予想され、
自己志向的完全主義に関しても、空想がポジティブ・ネガティブどちらに結び付くかの要因の一つになりうるのではないかと考えられる。