【方法】


1.調査対象
 A県内の大学生227名(男性115名,女性112名)に質問紙調査を行った。回答に不備があったものを除き,合計209名(男性104名,女性105名,平均年齢19.3歳)を分析対象とした。


2.調査時期
 2014年10月下旬〜12月初旬


3.質問紙の構成
 「同情をする他者が親密か顔見知りか」,「同じ経験をしているのかしていないのか」を被験者内要因として扱い,その2つを組み合わせた4場面を設定し,それぞれの場面でどのように感じるかを以下に示す尺度を用い検討を行った。なお,カウンターバランスをとるために,質問紙ごとに場面の順番をランダムに入れ替えた。
 仮想場面は,自分が努力をしたり,気をつけていたりしていてもネガティブな出来事が起きてしまった内容とし,自分にとって統制不可能な状況を設定した。高坂(2008)は劣等感と自己の重要領域との関連を述べており,大学生では「友達づくりの下手さ」に劣等感を感じやすいことを報告している。しかし,本研究では「学業での失敗」場面を設定した。小川(2011)の研究の予備調査においても,同情された出来事として「勉強・受験の失敗」が上位にあげられており,さらに学業については他者比較が行われやすいと予想され,大学生にとって単位を取得することは十分に重要なことであると考えられるためである。


3-1.多面的感情状態尺度(16項目)
 各場面でそれぞれの感情をどの程度感じるかについて検討するために,寺崎・岸本・古賀(1992)の多面的感情状態尺度を使用した。「抑鬱・不安」,「敵意」,「倦怠」,「活動的快」,「非活動的快」,「親和」,「集中」,「驚愕」の8因子87項目から構成されている尺度であった。項目数が多かったため,本研究では小川(2011)の同情された時の感情の分類を参考に,「抑鬱・不安」,「敵意」,「活動的快」「非活動的快」の4つの下位尺度を採用した。「抑鬱・不安」とは否定的な感情であり,抑鬱・不安感情に関するものがみられた項目である。「敵意」とは否定的感情であり,怒り,敵意といった攻撃的感情に関するものがみられた項目である。「活動的快」は肯定的感情に関して高覚醒・快の状態が同定された項目である。「非活動的快」は肯定的感情に関して低覚醒・快の状態が同定された項目である。計16項目からなり,4件法(「全く感じない」「あまり感じない」「少し感じる」「はっきり感じる」)で回答を求めた。

3-2.特性被援助志向性尺度(13項目)
 自分で解決することが困難な状況に直面したとき,「他者に援助を求める態度」を測定するために,田村・石隈(2006の特性被援助志向性尺度を使用した。「被援助に対する概念や抵抗感の低さ」(7項目)と「被援助に対する肯定的態度」(6項目)の2つの下位尺度から構成される。「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」とは,被援助に対する抵抗感や懸念に加え,他者から援助を受けた後の援助効果に対する懸念も示している項目からなる。「被援助に対する肯定的態度」とは,教師が職務上,困難に直面した場合,積極的に他者に援助を求めながら問題解決に努めようとする態度を示している項目からなる。本研究では,大学生でも答えられるように項目の一部を修正し,5件法(「全くあてはまらない」「あまりあてはまらない」「どちらともいえない」「ややあてはまる」「よくあてはまる」)で回答を求めた。