要旨



 本研究では、高校生の友人グループにおける心理的居場所感が攻撃性に及ぼす影響を検討することと、心理的居場所感と攻撃性それぞれに、依存欲求と仮想的有能感が及ぼす影響を検討することを目的とした。 
 本研究で使用した尺度の定義について、攻撃性は「能動的な力と破壊的な力の二面性を持つ。両者にはそれぞれ多様な形態があり、相反するものでなく、両者を包括した力自体に生きる原動力が存在する。」(安立,2001)、
心理的居場所感は「心の拠り所となる関係性、及び、安心感があり、ありのままの自分を受容される場を持っている感覚」、仮想的有能感は「自己の直接的なポジティブ経験に関係なく、他者の能力を批判的に
評価・軽視する傾向に付随して習慣的に生じる有能さの感覚」、依存欲求は「是認、支持、助力、補償などの源泉として他人を利用ないし頼りにしたいという欲求」とそれぞれ定義した。
 本研究の結果、男性は「役割感」が「積極的行動」に正の、「自責感」「猜疑心」に負の影響を与え、「被受容感」が「自己破壊行動」に負の影響を与えること、女性は「役割感」が「自責感」に負の影響、「安心感」が
「積極的行動」に負の影響を与えることを示した。
  また、依存欲求と心理的居場所感、攻撃性との関連から、男性では「情緒的依存欲求」から「積極的行動」、「道具的依存欲求」から「本来感」に正の影響、女性では 、「情緒的依存欲求」から「被受容感」「安心感」に正の影響、
「道具的依存欲求」から「対象攻撃行動」「猜疑心」に有意な正の影響がみられた。
 仮想的有能感は、自尊感情尺度と組み合わせることで、「仮想的有能感」「自尊感情」がともに高いHH群(以下全能型とする)、「仮想的有能感」が高く「自尊感情」が低いHL群(以下仮想型とする)、
「仮想的有能感」が低く「自尊感情」が高いLH群(以下自尊型とする)「仮想的有能感」「自尊感情」ともに低いLL群(以下萎縮型とする)の4群に分類した。
 仮想的有能感4類型と、心理的居場所感、攻撃性との関連から、仮想的有能感が高く、自尊感情が低い群(仮想型)は、心理的居場所感は総て低い得点、攻撃性は「積極的行動」を除いた
自他への攻撃性で高い得点を示した。

目次