【方法】
1.対象者
三重県内の大学生259名を対象に授業時間を使って質問紙調査を行った。回答に不備が見られたものや、PBI尺度の解答として両親が揃ったデータが得られなかったものを除外し、221名(男子86名、女子135名)を分析の対象とした。
2.調査時期
2015年12月上旬に実施した。
3.質問紙の構成
質問紙は以下の内容で構成された。
(1)反抗期の有無を尋ねる項目
「全くなかった」から「かなりあった」の4項目を設けた。全くなかった、ほとんどなかったと回答した者には、この項目以降(5)と(6)のみに回答をしてもらった。反抗期の定義としては、山田(1991)や、住田(1995)の説明をふまえ、「いわゆる思春期の頃に現れるものであり、親や教師などの大人との対立、自分をとりまく社会への反発心を経験すること」と定義し、理解を統一させた。
(2)反抗期がいつ頃あったかを尋ねる項目
小学校中学年(3・4年生)、小学校高学年(5・6年生)、中学、高校生、高校卒業時〜現在、の5項目を設けた。
(3)反抗対象を尋ねる項目
父親、母親、先生、祖父、祖母、その他(自由記述)の6項目を設けた。先生、祖父、祖母、その他と回答した者には、この項目以降(5)と(6)のみに回答してもらった。
(4)反抗感情・反抗行動尺度
反抗期の頃の、で(3)をつけた反抗対象への感情・行動を尋ねる項目として、須崎(2008)が作成した反抗感情・反抗行動尺度を使用した。「親の嫌いなところばかり目についた」などの、日常で感じる反抗的な感情を聞いた項目(16項目)と、「親の命令を無視した」などの、実際にどの程度反抗的な行動をとるかを聞いた項目(9項目)の計25項目を使用した。「全くあてはまらなかった」から「非常によくあてはまった」の5件法で尋ねた。
(5)PBI(Parental Bonding Instrument)尺度
小学生の頃の両親の養育態度を測定する尺度として、Parkerら(1979)が作成し、小川(1911)が日本語訳した、PBI(Parental Bonding Instrument)尺度を用いた。PBI尺度は子どもが16歳までの親の養育態度をCare(養護)とOver-protection(過保護)の2次元で評価する尺度であり、Care得点が高いほど愛情深く育てられたことを意味し、Over-protection得点が低いほど自律を促されて育ったことを意味する。Care得点(12項目)と、Over-protection得点(13項目)の計25項目を使用した。「全くそうでなかった」から「いつもそうであった」の4件法で尋ねた。鈴木ら(2002)によると、被調査者ごとにCare得点とOver-protection得点の平均値を出し、全体を中央値でそれぞれ高群・低群に分け、Care得点とOver-protection得点の高群低群を組み合わせたものを両親の養育態度「過保護・情愛」「自律承認・情愛」「干渉・冷淡」「無関心」に分けることができる。
(6)多次元自我同一性尺度
現在の自我同一性を測定する尺度として、谷(2001)が作成した多次元自我同一性尺度を用いた。自己の不変性および時間的連続性の感覚である「自己斉一性」(5項目)、自己についての明確さの感覚である「対自的同一性」(5項目)、本当の自分自身と他者からみられているだろう自分自身が一致する感覚である「対他的同一性」(5項目)自分と社会が適応的な結びつきを持っているという感覚である「心理社会的同一性」(5項目)の計20項目を用いた。「全く当てはまらない」から「非常によくあてはまる」の5件法で尋ねた。