【結果】



1.尺度構成の検討
 各下位尺度の記述統計及び信頼係数を、Table 1に示す。
 各下位尺度の天井効果および床効果を確かめた。反抗感情尺度に天井効果が見られる項目があったが、反抗期の様子を測る重要な項目であったため、削除せずに使用した。また、父親・母親共にCare得点・Over-protection得点に天井効果および床効果がみられる項目があったが、両親の養育態度を測る重要な項目であったため、削除せずに使用した。また、使用した尺度はすべて、大きく修正したものはないため、先行研究を踏まえ集計した。
 各下位尺度の信頼性を検討するため、クロンバックのα係数を算出した所、十分な信頼性があることを確認した。




2.反抗期の有無とその時期と対象
 自分に反抗期があった(すこしあった、かなりあった)と回答した者は、128名(58%:男子45名・女子83名)、反抗期がなかった(全くなかった、ほとんどなかった)と回答した者は93名(42%:男子41名・女子52名)であった。 反抗期があった者のうち、反抗期の時期(複数回答)に関しては、中学生の時が最も多く90名、ついで高校生が74名、小学校高学年が23名であった。その他の回答はTable 2 に示した。
 反抗の対象(複数回答)に関しては、母親を挙げたものがもっとも多く108名、ついで父親が62名、先生が18名であった。その他の回答はTable 3 に示した。なお、その他の自由記述に関しては、兄姉・社会などの記述が見られた。




3.各下位尺度間の相関
 反抗感情・反抗行動尺度、PBI尺度、多次元自我同一性尺度の下位尺度間の相関を算出した。Table 4,5,6に示す。

(1)反抗感情・反抗行動尺度とPBI尺度の下位尺度間相関(Table 4)
 「反抗感情」は「反抗行動」、「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「父親のCare得点」、「母親のCare得点」において有意な負の相関を示した。「反抗行動」は「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「父親のCare得点」、「母親のCare得点」において有意な負の相関を示した。



(2)反抗感情・反抗行動尺度と多次元自我同一性の下位尺度間相関(Table 5)
 「反抗感情」は「自己斉一性」、「対自的同一性」、「多次元自我同一性」に有意な負の相関を示した。「反抗行動」は「自己斉一性」、「対自的同一性」、「対他的同一性」、「多次元自我同一性」に有意な負の相関を示した。



(3)PBI尺度と多次元自我同一性の下位尺度間相関(Table 6)
 「父親のCare得点」は「母親のCare得点」、「自己斉一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な正の相関を示し、「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。「父親のOver-protection得点」は「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「母親のCare得点」、「自己斉一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な負の相関を示した。「母親のCare得点」は「自己斉一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な正の相関を示し、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。「母親のOver-protection得点」は「自己斉一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な負の相関を示した。




4.性別ごとの各下位尺度間の相関
 男女別に反抗感情・反抗行動尺度、PBI尺度、多次元自我同一性尺度の下位尺度間の相関を算出した。Table 7,8,9に示す。右上が男性、左下が女性である。

(1)反抗感情・反抗行動尺度とPBI尺度の下位尺度間相関(Table 7)
 男性の「反抗感情」は「反抗行動」、「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「父親のCare得点」、「母親のCare得点」において有意な負の相関を示した。
 女性の「反抗感情」においても同様の結果が示された。男性の「反抗行動」は「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「父親のCare得点」、「母親のCare得点」において有意な負の相関を示した。女性の「反抗行動」においても同様の結果が示されたが、「父親のOver-protection得点」とは有意な相関が見られなかった。



(2)反抗感情・反抗行動尺度と多次元自我同一性の下位尺度間相関(Table 8)
 男性の「反抗感情」は「自己斉一性」、「対自的同一性」、「多次元自我同一性」に有意な負の相関を示した。女性の「反抗感情」は、多次元自我同一性の下位尺度との関係が見られなかった。男性の「反抗行動」は「自己斉一性」、「対自的同一性」、「多次元自我同一性」に有意な負の相関を示した。
 女性の「反抗行動」は「自己斉一性」「対他的同一性」「多次元自我同一性」に有意な負の相関を示した。



(3)PBI尺度と多次元自我同一性の下位尺度間相関(Table 9)
 男性の「父親のCare得点」は「母親のCare得点」、「自己斉一性」、「対他的同一性」において有意な正の相関を示し、「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。女性の「父親のCare得点」は、「母親のCare得点」、「自己斉一性」において有意な正の相関を示し、「父親のOver-protection得点」、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。
 男性の「父親のOver-protection得点」は「母親のOver-protection得点」において有意な正の相関を示し、「母親のCare得点」、「自己斉一性」、「対他的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な負の相関を示した。女性の「父親のOver-protection得点」も「母親のOver-protection得点」に有意な正の相関を示し、「母親のCare得点」にのみ有意な負の相関を示した。
 男性の「母親のCare得点」は「自己斉一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な正の相関を示し、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。女性の「母親のCare得点」は「心理社会的同一性」に有意な正の相関を示し、「母親のOver-protection得点」において有意な負の相関を示した。
 男性の「母親のOver-protection得点」は「自己斉一性」、「対自的同一性」、「対他的同一性」、「心理社会的同一性」、「多次元自我同一性」において有意な負の相関を示した。女性の「母親のOver-protection得点」では、それらの相関が見られなかった。




5.養育態度における反抗期の有無の人数のカイ2乗検定
 まず、PBI尺度の「父親のCare得点」「父親のOver-protection得点」「母親のCare得点」「母親のOver-protection得点」のそれぞれの平均値を被験者ごとに算出し、Care得点とOver-protection得点を中央値で分けた高群低群を組み合わせ、養育態度を「過保護・情愛」「自律承認・情愛」「干渉・冷淡」「無関心」に分類をした。
 両親・母親・父親の養育態度における反抗期の有無の人数の相違を検討するために、カイ2乗検定を行った。また、本研究でいう両親の養育態度とは、父親と母親の養育態度が一致している群を扱うこととする。
 「両親の養育態度」と「反抗期の有無」にカイ2乗検定を実施すると、有意差が認められた(x2=12.098,df=3,p<.01)。その後、残差分析を行ったところ、反抗期有群において「干渉・冷淡」群が有意に多いこと、「自律承認・情愛」群が有意に少ないことが示された(Table 10)。
「父親の養育態度」と「反抗期の有無」にカイ2乗検定を実施すると、有意差が認められた(x2=9.655,df=3,p<.05)。その後、残差分析を行ったところ、反抗期有群において「干渉・冷淡」群が有意に多いこと、「自律承認・情愛」群が有意に少ないことが示された(Table 11)。
「母親の養育態度」と「反抗期の有無」にカイ2乗検定を実施すると、有意差が認められた(x2=14.604,df=3,p<.01)。その後、残差分析を行ったところ、反抗期有群において「干渉・冷淡」群が有意に多いこと、「自律承認・情愛」群が有意に少ないことが示された(Table 12)。




6.反抗対象と多次元自我同一性の重回帰分析
 反抗対象と多次元自我同一性の確立との関連を見るために、性別ごとに「反抗対象(父親・母親)」を独立変数、「多次元自我同一性尺度」を従属変数とした強制投入法による重回帰分析を行った。その結果、男性において「反抗対象(母親)」から「自己斉一性」に対する標準化係数が有意であった(Table 13)




7.反抗対象と反抗行動の重回帰分析
 有意な結果が得られた男性における反抗対象における反抗態度を調べるために、男性の「反抗対象(父親・母親)」を独立変数、「反抗行動」「反抗感情」を従属変数とした強制投入法による重回帰分析を行った(Table 14)。その結果、「反抗対象(母親)」から、「反抗行動」に対する標準化係数が有意であった。また、「反抗感情」に対する標準化係数は有意ではなかった。




8.両親の養育態度と反抗期の有無における多次元自我同一性の2要因分散分析
 両親の養育態度における反抗期の有無によって多次元自我同一性に違いがあるかを見るために、「両親の養育態度(過保護・情愛、自律承認・情愛、干渉・冷淡、無関心)」と「反抗期の有無(有、無)」を独立変数、「自己斉一性」「対自的同一性」「対他的同一性」「心理社会的同一性」を従属変数とした、4×2の2要因分散分析を行った(Table 15)。 分散分析の結果、「自己斉一性」において「両親の養育態度」の主効果が有意であり(F(3,128)=3.1,p<.05)、多重比較の結果、「両親無関心」群が「父母干渉・冷淡」群より、「両親自律承認情愛」群が「父母干渉・冷淡」群より、自己斉一性が有意に高いことが示された。




9.性別ごとの母親の養育態度と反抗期の有無における多次元自我同一性の2要因分散分析
 性別ごとに母親の養育態度における反抗期の有無によって多次元自我同一性に違いがあるかをみるために、男女ごとに「母親の養育態度(過保護・情愛、自律承認・情愛、干渉・冷淡、無関心)」と「反抗期の有無(有、無)」を独立変数、「自己斉一性」「対自的同一性」「対他的同一性」「心理社会的同一性」「多次元自我同一性」を従属変数とした、4×2の2要因分散分析を行った(Table 16,17)。
 男性においての分散分析の結果、「対他的同一性」において、「母親の養育態度」と「反抗期の有無」の交互作用が有意であった(F=2.98,p<.05)。単純主効果の検定の結果、「自律承認・情愛」群において「反抗期の有無」の単純主効果が有意であることが示され(F(1,78)=8.570,p<.01)、「自律承認・情愛」群において、「反抗期有」群よりも「反抗期無」群の方が「対他的同一性」が高くなることが示された。また、「反抗期無」群において「母親の養育態度」の単純主効果が有意であることが示され(F(3,78)=3.33,p<.05)、「反抗期無」群において、「干渉・冷淡」群よりも「自律承認・情愛」群の方が「対他的同一性」が高くなることが示された。
 女子においての分散分析の結果、「心理社会的同一性」において、「反抗期の有無」の主効果が有意であり、(F(1,123)=4.44,p<.05)反抗期無群が反抗期有群よりも心理社会的同一性が有意に高いことが示された。交互作用は見られなかった。






10.性別ごとの父親の養育態度と反抗期の有無における多次元自我同一性の2要因分散分析
 性別ごとに父親の養育態度における反抗期の有無によって多次元自我同一性に違いがあるかをみるために、男女ごとに「父親の養育態度(過保護・情愛、自律承認・情愛、干渉・冷淡、無関心)」と「反抗期の有無(有、無)」を独立変数、「自己斉一性」「対自的同一性」「対他的同一性」「心理社会的同一性」「多次元自我同一性」を従属変数とした、4×2の2要因分散分析を行った(Table 18,19)。
 男性においての分散分析の結果、「自己斉一性」において、「父親の養育態度」の主効果が有意であり(F(3,78)=3.019,p<.05)、多重比較の結果、「干渉・冷淡」群よりも「自立承認・情愛」群の方が、自己斉一性が有意に高いことが示された。また、「心理社会的同一性」において、「反抗期の有無」の主効果が有意であり、「反抗期有」群よりも「反抗期無」群の方が、心理社会的同一性が高いことが示された。
 女性においての分散分析の結果、「自己斉一性」において、「父親の養育態度」の主効果が有意であった(F(3,127)=3.498,p<.05)。多重比較の結果、「干渉・冷淡」群よりも「自立承認・情愛」群の方が、自己斉一性が有意に高いことが示された。