【総合考察】
1.受援力と受援計画
本研究では、受援力に焦点を当て、災害時における自治体の組織的対応について検討してきた。そこで受援計画の存在と必要性について論じた。
受援力は先述したように、外からの支援を地域で受け入れる知恵や環境のことであるとしているが、受援計画はその受援力を表す一つの手段であると考える。受援力という形のないものを認識できるようにしたものが受援計画であり、受援計画を作成することが受援力を高める方法にもなる。
しかし、受援計画を作成するだけでは受援力が必ず高くなるとは言えないだろう。この計画はあくまできっかけに過ぎず、組織的対応を効率よくするためのものである。作成したことに甘え、そこで終わってしまっては高まるどころか低くなってしまうだろう。さらに言えば、作成したことを自治体全体が知っていなければ意味がないことになってしまう。そのためにも全体で受援計画を用いた訓練を頻繁に行うこと、受援計画を見直し続けること、受援力について考え続けることが必要である。
また、平時からの準備が受援力を高めていく要因になる。神戸市の受援計画にも記載されているようにそれぞれの関係機関と連携できる体制を整えることや準備できるものは準備しておくことなど常に動くことができるようにしておくことがもしもの時に受援力を最大限発揮できるようになると考える。平時からの準備は自治体だけではできないこともあるため、地域のこととして協力して準備していく必要がある。
自分たちが現在持っている受援力がどれほどなのかを知ることが受援計画を作成するうえで重要にはなってくるだろう。自分たちには何ができて、何ができないのか知ることで計画作成にも平時からの準備にも適切な対応をしていくことができるだろう。現在災害対応についてどこまで考えられ、整理されているかを調べる必要がある。防災計画のようなものに受援について書かれているのか、まとめられているものがあるのかなど自分たちの取り組みを見直すことから始めなければならない。それから足りない内容や要素について検討し、今後の方向性や整備について考えていく必要がある。その際に神戸市はもちろんのこと、他の都市の受援力や災害対応についての考え方や知識を知ることで自分たちに活かすことができるのか、または発展させるためにどうしていくかなどの基礎を作り上げることができるだろう。
受援力や受援計画に注目が集まってきた現在、どうしていくかということを全国的に考えなければならない時に来ている。このことは国を挙げて考えるべき事案ではあるが、国が始めるのではなく、各自治体が最初の動きを見せるべきであると考える。受援計画が全国的に広がり、発展していくことで自治体の受援力はもちろん、日本としての受援力も高まっていくことになるだろう。
2.受援力と支援力
「受援力」を考える上では「支援力」について考えることを忘れてはいけない。支援があるから受援をするという流れがある中で、自治体は自分たちの支援力にも目を向けなければならない。支援に関しては今までも考えられてきたことではある。自治体は支援を受け入れること、受援をすることよりも支援をする経験の方が多いのは想像に難くないし、事実であろう。そのため、自分たちの支援力に関してはある程度把握できていると思う。
ただ、その支援力が本当に高いのか、強力なものなのか、被災地にとって効果的な支援になるものなのか、なっているかといったことは考えなければならない。相手の受援力がなければ支援を受け入れることが難しいことを理解した上で支援できているかということも考えなければならない。それも支援力の一つである。
それから、支援力を高めることは受援力を高めることにつながる。自らの支援力を知り、支援についての知識を考えることで受援に必要な要素も理解でき、また、支援での経験を受援に活かすことで受援力についての考えが深まり、高めることができる。現場の状況や相手の気持ちを知ることは何よりも大きな経験である。この経験を無駄にしない受援力のあり方を追求していくことが重要である。
支援は自治体によるもの、ボランティアによるものなど多様な形で行われる。それぞれの支援に対して個別の受援力も持っておかなければならない。もちろん総合的な受援力は必要だがそれ以上に支援に合わせた受援力は必要である。自治体への受援力は持っていると考えられるが、ボランティアに対する受援力はあまり高くないだろう。それはボランティアの支援についてまだ知らない部分があることが原因だろう。この点を考えるためにもボランティアとしての支援経験を持つことが必要となってくる。ボランティアのことを知らないのにそれに対する受援力を持つことは無理な話である。よって支援について多様な視点を持つことが受援につながると考える。
そして、受援力を高める上で大切なこととして、重川(2013)は“助けられ上手”になることが必要であると述べている。支援とはいわば助けられることである。助けられることに対して遠慮をする、申し訳なく思うことは支援を妨げる要因になってしまう。そうではなく、助けられることに対して素直に感謝の気持ちを持つこと、それを相手に伝えること、支援者を大切にし、謙虚な気持ちを持って接することなど相手が支援してよかったと思える環境を作ることも受援力には必要なことだろう。
受援力を高めることは同時に自身の支援力を高めることにもなる。さらには相手の支援力も高めることにつながるだろう。そのため受援力は「支援をうまく受け入れる力であり、支援者の支援力を高める力」と言うこともできるのではないかと考える。うまく受援できれば、うまく支援ができる。そのサイクルが続くことで受援力も支援力もより高めていくことができ、支援者のそれにもつながっていくだろう。支援と受援という表裏一体の関係性の中でどちらか一方だけを考えるのではなく、相互的に考えていくことで互いへの理解が深まり、災害支援がより発展したものになると考える。