要旨



 本研究では、「自分とは、何によってどのように形作られているのか」という問いを検討するため、ボウルビイが提唱した愛着の理論に着目し、養育者との間で獲得された自己観と他者観によって方向づけられる愛着スタイルによって、自己に関する認知が体制化されたものである自己概念にどのようなちがいがみられるのかについて検討することを目的とした。

 愛着スタイルを測定する指標としては、ボウルビイの内的作業モデルの考え方が反映されているECR-GOを用い、自己概念を測定する指標としては、他者の存在によって形成される自己に焦点を当て、他者と比較した際の自己認知を測定できるPIと、他者との関連によって芽生え始めるとされる自己意識を用いた。そして、4分類した愛着スタイルと、内的作業モデルの自己観、他者観による自己概念のちがい、特に自己概念の中でも、他者と比較した際の自己評価、自己意識に焦点を当て、自己概念のちがいについての検討を行った。これまでの研究では、愛着スタイルや内的作業モデルの自己観・他者観と、自己概念との関連を検討したものは数少なかった。

本研究の結果から、愛着スタイル安定型は全体的な項目においてに自己を平均以上と捉えており、とらわれ型も、他者との関わりに関する項目で自己を平均以上であると捉えていることが明らかになった。また、とらわれ型は他のスタイルと比べて、自己意識が強いことが示された。さらに、本研究からは、他者と比較した際の自己評価は、内的作業モデルの見捨てられ不安(自己観)よりも、親密性の回避(他者観)と関連があることが示された。


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