自由記述回答のカテゴリー分け
 他者の期待に対する感じ方の違いを検討するために、自由記述で回答を求めた。 質問の内容は「あなたは他者から期待を受けていると感じた時、どのように思ったり、行動したりしますか。できるだけ具体的に記述してください。」とした。 得られた回答について、著者および教育心理学専攻の学部生の2名でKJ法を用いてカテゴリー分けを行い、各カテゴリーについて命名した。 なお、被験者1名の回答に複数の内容が含まれる場合は、該当するすべてのカテゴリーに属するものとして扱った。 KJ法によるカテゴリー分けの結果、「期待に応えられるように精一杯頑張る」や「期待に応えられるように最善を尽くす」などからなる「強い期待充足欲求」、 「期待に応えようとする」「頑張ろうと努力する」などからなる「中程度の期待充足欲求」、 「できるだけ期待に応えたいと思う」「なるべく期待に応えられるように行動する」などからなる「弱い期待充足欲求」、 「期待されることはうれしい」「有り難いと思う」などからなる「肯定的受容」、 「期待されるのはプレッシャーになる」「期待されたらどうしようと不安になる」などからなる「プレッシャー」、 「期待に応えられなかった時の対処法を考える」「信用を無くしたくないため忠告をする」などからなる「失敗回避」、 「あまり意識しないようにする」「自分ができないならやらない」などからなる「逃避」、 「自分のペースで頑張る」「行動は変えない」などからなる「自己の維持」の8カテゴリーに分類された。  カテゴリー毎の語集については「付録」に示す。

各カテゴリーの記述の有無と行動志向性、CS尺度、抑うつ傾向との関連

 分類されたカテゴリー毎に、その記述の有無によって行動志向性、C S尺度、抑うつ傾向尺度との間に関連があるか検討するために、 Welchの方法による平均値の差の検定(Table 20-21)を行った。 その結果、「強い期待充足欲求」の記述あり群はC尺度が高く(t=2.13; p<.05)、 「中程度の期待充足欲求」の記述あり群はポジティブ感情が高く(t=2.65;p<.01)、 「肯定的受容」の記述あり群は友人関係の行動志向性が高く(t=2.44; p<.05)、 「プレッシャー」の記述あり群はS尺度が低い(t=2.06; p<.05)一方でC尺度が高く(t=2.87; p<.01)、 「失敗回避」の記述あり群は、運動能力の行動志向性、S尺度およびポジティブ感情が低い(t=2.48,2.20,2.24; p<.05) ことが確認された。

Table 20 自由記述回答の有無とCS尺度、抑うつ傾向の関連
Table 21 自由記述回答の有無と行動志向性との関連