CS尺度の性差
「他者欲求への敏感さとその充足の優先」および「自己主張の強さ」について性差を検討したところ、
他者欲求への敏感さとその充足の優先において女性が有意に高いという結果が得られた。
これは山本(1989)の結果と一致する。
本研究では山本(1989)の作成したCS尺度について、それぞれの下位尺度から一つを選択して使用したが、性差に関しては同様の結果が得られることが明らかとなった。
つまり、人の気持ちを察することが得意、他者の幸せが自分の幸せにもなると感じる性格特性は女性に顕著に見られるが、
自分の意思表示をはっきりとする、人の意見に左右されないといった性格特性は男女間に差がないと言える。
CS尺度と行動志向性の相関関係
「他者欲求への敏感さとその充足の優先」および「自己主張の強さ」と行動志向性との相関関係を検討した結果、
「他者欲求への敏感さとその充足の優先」と「運動能力」「容姿」「友人関係」「品行」「学業能力」の行動志向性すべてにおいて正の相関が見られ、
「自己主張の強さ」と「容姿」の行動志向性との間に負の相関が見られた。
ここから、他者の欲求への敏感さや他者の欲求充足を優先する傾向があることは行動志向性の高さとつながり、
自己主張の強さは「容姿」の行動志向性の低さとつながることがわかる。
高山(2009)の研究によると、相互独立性が自己決定の程度の強い動機づけを高め、相互協調性は自己決定の程度の低い動機づけを低めることが明らかになっている。
相互独立性の尺度内にも自己主張の強さに関連する項目が見られることから、自己主張の強さは自己決定の程度の高い動機づけを選択する傾向を促進すると考えられる。
そのため「容姿」の行動志向性については、他者からの称賛を得るためであったり、環境に対応するためであったりと、自己決定の程度が低い動機づけが重要となるために、
自己主張の強さが行動志向性の低さにつながったのではないかと考えられる。
CS尺度と抑うつ傾向との相関関係
「他者欲求への敏感さとその充足の優先」および「自己主張の強さ」と抑うつ傾向との相関関係を検討した結果、
「他者欲求への敏感さとその充足の優先」および「自己主張の強さ」とポジティブ感情との間に正の相関が、
「自己主張の強さ」と抑うつ気分、疎外感との間に負の相関が見られた。
ここから、精神的健康が望ましい状態であるためには、自己主張の強さが重要となってくると言える。
上述した通り、自己主張の強さは自己決定の程度が高い動機づけを選択する傾向がある。
自己決定理論においては、学ぶこと、働くことなど多くの活動において、自己決定することが高いパフォーマンスや精神的な健康をもたらすとされている(櫻井,2012)。
したがって、自己主張の強さが抑うつ傾向の低さとつながったのではないかと考えられる。