結果
回答に不備があったものを除き,合計127名(男性57名,女性70名)を分析の対象とした。
平均年齢は19.94歳であった。
尺度構成の検討
●コミットメント
話題へのコミットメントを測る4項目の平均値と標準偏差を算出した。そのうち床効果が見られた1項目を以降の分析からは除外することとした。Cronbachのα係数を算出したところ,α=.76となり,信頼性があると判断した。
●自己決定欲求尺度
因子構造は先行研究にならい,1因子構造とした。自己決定欲求尺度の平均値と標準偏差を算出した。さらに逆転項目を修正した。Cronbachのα係数を算出したところ,α=.70となり,信頼性があると判断した。
●同調志向尺度
因子構造は先行研究にならい,2因子構造とした。各下位尺度である「規範的影響」「情報的影響」の平均値と標準偏差を算出した。Cronbachのα係数を算出したところ,「規範的影響」でα=.88,「情報的影響」でα=.70となり,信頼性があると判断した。
各下位尺度の記述統計と相関係数
使用尺度の全体の下位尺度の記述統計,男女別の各下位尺度の記述統計およびt値を算出した。男女差について,コミットメントにおいては男性より女性の方が有意に高かった(t=5.12 ; p<.01)。
●全体の相関係数
各下位尺度の相関係数を算出した。「コミットメント」は,「賛成よりの意見への賛同度」(r=.351,p<.01)との間に有意な正の相関が見られ,「規範的影響」(r=-.261,p<.01)との間に有意な負の相関が見られた。「自己決定欲求」は,「規範的影響」(r=-.286,p<.01),「情報的影響」 (r=-.248,p<.01)との間に有意な負の相関が見られた。「規範的影響」と「情報的影響」との間に有意な正の相関(r=.539,p<.01)が見られた。
●群別の相関係数
話し合い前の意見の立場(当初「賛成」または当初「反対」)と議論の結果(質問紙上の結論として,結論「賛成」または結論「反対」)のパターンによって4群(当初「賛成」・結論「賛成」群,当初「賛成」・結論「反対」,当初「反対」・結論「賛成」群,当初「反対」・結論「反対」群)に分け,群別に各下位尺度間の相関係数を算出した。
当初「賛成」・結論「賛成」群では,「コミットメント」と「賛成よりの意見への賛同度」(r=.310,p<.05)の間に有意な正の相関が見られ,「規範的影響」と「規範的影響」との間に有意な高い正の相関(r=.580,p<.01),「変容度」との間に有意な負の相関(r=-.320,p<.05)が見られた。
当初「賛成」・結論「反対」群では,「コミットメント」と「賛成寄り意見への賛同度」(r=.299,p<.05),「自己決定欲求」(r=.324,p<.05)に有意な正の相関,「規範的影響」(r=-.376,p<.01)に有意な負の相関が見られた。
また,「反対寄り意見への賛同度」と「納得度」(r=.300,p<.05)に有意な正の相関が見られた。「自己決定欲求」と「規範的影響」(r=-.394,p<.01),「情報的影響」(r=-.350,p<.01)でそれぞれ有意な負の相関,「変容度」(r=.293,p<.05)で有意な正の相関が見られた。「規範的影響」と「情報的影響」の間に有意な正の相関(r=.505,p<.01)が見られた。
当初「反対」・結論「賛成」群では,「賛成寄り意見への賛同度」と「納得度」(r=-.558,p<.05)で有意な負の相関が見られ,「規範的影響」と「情報的影響」(r=.537,p<.05)で有意な正の相関が見られた。
当初「反対」・結論「反対」群では,「規範的影響」と「情報的影響」(r=.642,p<.05)で有意な正の相関が見られた。
納得度についての検討
●納得度の高低による検討
納得度の高低によって2つの群に分け,t検定をおこなった。「自己決定欲求」において,納得度高群の平均が4.10,納得度低群の平均が4.39であり,納得度低群の方が有意に高い得点を示していた(t=2.92,p<.01)。また,「反対寄り意見への賛同度」において,納得度高群の平均が4.36,納得度低群の平均が4.13であり,納得度高群の方が有意に高い得点を示していた(t=2.13,p<.05)。
●重回帰分析による検討
「コミットメント」「自己決定欲求」「情報的影響」「グループとしての結論」を独立変数,納得度を従属変数として重回帰分析をおこなった。その結果,「自己決定欲求」(β=-.197,p<.05),「グループとしての結論」(β=-.216,p<.05)からそれぞれ負の影響が見られた。つまり,自己決定欲求が高いほど納得度が低いという結果であった。
●クラスタ分析による検討
調査対象者を,規範的影響・情報的影響の得点を用いて,クラスタ分析を行ったところ,4つのクラスタに分けられた。規範的影響は第2クラスタと第3クラスタが同程度,その次に第1クラスタ,第4クラスタの順に高く,有意な群間差が見られた。情報的影響については,第2クラスタが他のクラスタに比べ有意に高く,その後高い順に第3クラスタ,第1クラスタ,第4クラスタと続き,第3クラスタと第4クラスタの間には有意な差が見られ,第3クラスタと第1クラスタ,第1クラスタと第4クラスタ間ではそれぞれ有意な差は見られなかった。このクラスタ分析の結果を独立変数,納得度を従属変数として一要因分散分析をおこなったが,群間に有意な差はみられなかった。
自由記述欄と意見項目について
話し合い前の意見として求めた自由記述欄について,全体的な傾向として,「適度なダイエットは良いと思うが,過度なものはするべきではない」というような,中立的な意見が多く見受けられた。はっきりと賛成または反対の態度を示す被験者は少なく,そのような被験者は意見の変容が少なかった。また,「ダイエット」の定義を調査者から提示することはなかったが,ほぼすべての被験者が「ダイエット」について,痩せる・体重を落とすという意味としてとらえているようだった。「大学生」という年齢設定については,「大学生には必要ない」というような否定的立場より,「大学生なら良い」というような肯定的立場からの意見の方が多くみられた。
意見の推移について
大学生がダイエットをすることについての賛否を,話し合いの前,意見を聞いた(読んだ)直後,グループとしての結論が出た後の計3回,8段階のスケール上で尋ねた。1~4を反対派,5~8を賛成派として,推移パターンごとにそれぞれ何人が属しているのかを調べた。もともと賛成派である被験者が多く,またそのほとんどがどの時点においても元の立場を維持していた。