結果
1.各下位尺度の記述統計
各下位尺度の記述統計をTable2に示す。
いじめ関連行動尺度12項目をそれぞれの場面ごと,公正世界信念尺度12項目の平均値と標準偏差を算出し,天井効果およびフロア効果を確かめた。いずれの尺度においても,天井効果およびフロア効果は見られなかった。
2.尺度構成の検討
2-1.公正世界信念尺度の信頼性の検討
中学生のもつ公正世界信念を測定するために村山・三浦(2015)の公正世界信念尺度の3つの下位尺度12項目の一部に若干の修正を加えた尺度を用いた。この公正世界信念尺度の内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,「究極的公正世界信念」でα=.85「内在的公正世界信念」でα=.57「不公正世界信念」でα=.69であったため,十分とは言えないが,ある程度の信頼性があると考えた。
2-2.いじめ関連行動尺度の信頼性の検討
いじめ場面を目撃した時の第三者の行動を測定するために,蔵永他(2008)のいじめ関連行動尺度を使用した。12項目を用い,その一部に若干の修正を加えた尺度を用いた。このいじめ関連行動尺度の内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,「はやしたて行動」でα=.86,「被害者援助行動」でα=.89,「傍観行動」でα=.72であったため,十分に信頼性があると判断した。
3.場面ごとにおける各下位尺度間の相関関係
場面ごとにおける各下位尺度間相関を以下に示す(Table3)。「究極的公正世界信念」と「内在的公正世界信念」「人気者の被害者援助行動」「目立たない存在の被害者援助行動」との間にそれぞれ正の相関(r=.41,30,30;p<.01),「究極的公正世界信念」と「不公正世界信念」「人気者の傍観行動」「目立たない存在の傍観行動」との間にそれぞれ弱い負の相関(r=.-24,-21,-22;p<.01)が見られた。「内在的公正世界信念」と「人気者の被害者援助行動」「目立たない存在の被害者援助行動」にそれぞれ正の相関(r=.31,33;p<.01),「内在的公正世界信念」と「人気者のはやしたて行動」「人気者の傍観行動」「目立たない存在のはやしたて行動」「目立たない存在の傍観行動」との間にそれぞれ弱い負の相関(r=.-17,-28,-15,-28;p<.01)が見られた。「不公正世界信念」と「人気者の被害者援助行動」との間に弱い負の相関(r=.-14;p<.05)が見られた。「人気者のはやしたて行動」と「人気者の傍観行動」「目立たない存在のはやしたて行動」「目立たない存在の傍観行動」との間にそれぞれ正の相関(r=.37,53,30;p<.01),「人気者のはやしたて行動」と「人気者の被害者援助行動」「目立たない存在の被害者援助行動」との間にそれぞれ負の相関(r=.-46,-29;p<.01)が見られた。「人気者の被害者援助行動」と「目立たない存在の被害者援助行動」との間に正の相関(r=.68;p<.01),「人気者の被害者援助行動」と「人気者の傍観行動」「目立たない存在のはやしたて行動」「目立たない存在の傍観行動」との間にそれぞれ負の相関(r=.-59,-30,-47;p<.01)が見られた。「人気者の傍観行動」と「目立たない存在のはやしたて行動」「目立たない存在の傍観行動」との間にそれぞれ正の相関(r=.25,61;p<.01),「人気者の傍観行動」と「目立たない存在の被害者援助行動」との間に負の相関(r=.-41;p<.01)が見られた。「目立たない存在のはやしたて行動」と「目立たない存在の傍観行動」との間に弱い正の相関(r=.27;p<.01)「目立たない存在のはやしたて行動」と「目立たない存在の被害者援助行動」との間に弱い負の相関(r=.29;p<.01)が見られた。「目立たない存在の被害者援助行動」と「目立たない存在の傍観行動」との間に負の相関(r=.-60;p<.01)が見られた。
4.集団内地位および公正世界信念下位3尺度の高低の違いによるいじめ関連行動尺度の下位尺度の得点の検討
いじめ関連行動尺度の下位尺度を従属変数に,2[究極的公正世界信念:高群・低群(被験者間)]×2[集団内地位:高群(人気者)・低群(目立たない存在)(被験者内)]の2要因分散分析を行った(Table4)。その結果,集団内地位,究極的公正世界信念それぞれの有意な主効果がみられた。はやしたて行動については,集団内地位の高低のみの有意な主効果が見られた。人気者の方が目立たない存在よりはやしたて行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =8.02,p<.01]。被害者援助行動については,集団内地位の高低,究極的公正世界信念の高低それぞれの有意な主効果が見られた。人気者の方が目立たない存在より被害者援助行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =53.13,p<.01]。究極的公正世界信念高群の方が究極的公正世界信念低群より被害者援助行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =14.27,p<.01]。傍観行動については,集団内地位の高低,究極的公正世界信念の高低それぞれの有意な主効果が見られた。目立たない存在の方が人気者より傍観行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =44.33,p<.01]。究極的公正世界信念低群の方が究極的公正世界信念高群より傍観行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =7.29,p<.01]。なお,いずれの場合においても有意な交互作用は見られなかった。
いじめ関連行動尺度の下位尺度を従属変数に,2[内在的公正世界信念:高群・低群(被験者間)]×2[集団内地位:高群(人気者)・低群(目立たない存在)(被験者内)]の2要因分散分析を行った(Table5)。その結果,集団内地位,内在的公正世界信念それぞれの有意な主効果がみられた。はやしたて行動については,集団内地位の高低,内在的公正世界信念の高低それぞれの有意な主効果が見られた。人気者の方が目立たない存在よりはやしたて行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =7.86,p<.01]。内在的公正世界信念低群の方が内在的公正世界信念高群よりはやしたて行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =7.39,p<.01]。被害者援助行動については,集団内地位の高低,内在的公正世界信念の高低それぞれの有意な主効果が見られた。人気者の方が目立たない存在より被害者援助行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =53.01,p<.01]。内在的公正世界信念高群の方が内
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在的公正世界信念低群より被害者援助行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =19.31,p<.01]。傍観行動については,集団内地位の高低,内在的公正世界信念の高低それぞれの主効果が見られた。目立たない存在の方が人気者より傍観行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =44.23,p<.01]。内在的公正世界信念低群の方が内在的公正世界信念高群より傍観行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =14.72,p<.01]。なお,いずれにおいても有意な交互作用はみられなかった。
いじめ関連行動尺度の下位尺度を従属変数に,2[不公正世界信念:高群・低群(被験者間)]×2[集団内地位:高群(人気者)・低群(目立たない存在)(被験者内)]の2要因分散分析を行った(Table6)。その結果,集団内地位のみの有意な主効果がみられた。はやしたて行動については,人気者の方が目立たない存在よりはやしたて行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =7.82,p<.01]。被害者援助行動については,人気者の方が目立たない存在より被害者援助行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =54.05,p<.01]。傍観行動については,目立たない存在の方が人気者より傍観行動を行うという結果が得られた[F (1,290) =8.02,p<.01]。なお,はやしたて行動については,集団内地位と不公正世界信念の交互作用に有意傾向が見られた[F (1,290) =44.35,p=.09]。不公正世界信念高群においては,人気者の方が目立たない存在よりもはやしたて行動を行う可能性がある。