各下位尺度の平均値,標準偏差を算出し,天井効果およびフロア効果を確認した(Table1)。いずれの項目においても,問題ないと判断したため,削除せずに使用した。
友人グループ内における居場所に対する感情を測定するために,則定(2007)の青年版心理的居場所感尺度を使用した。20項目を用い,その一部に若干の修正を加えた尺度を用いた。この青年版心理的居場所感尺度の内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,「本来感」がα=.901,「役割感」がα=.905,「被受容感」がα=.910,「安心感」がα=.913で十分に信頼性があると判断した。
友人グループのメンバーに対する感情を測定するために,三島・橋本(2016)の仲間集団指向性尺度を使用した。13項目を用い,その一部に若干の修正を加えた尺度を用いた。この仲間集団指向性尺度の内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,「固定的な集団指向」がα=.738,「独占的な親密関係指向」がα=.643とやや低い信頼性であったが,そのまま項目を削除せずに使用した。
友人グループの人を排他することに対する罪悪感を測定するために,三島・橋本(2016)の仲間集団指向性尺度の文末を「申し訳ないと感じる」に修正し,13項目を使用した。罪悪感予期尺度の内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,「固定的な集団指向に対する罪悪感」がα=.743「独占的な親密関係指向に対する罪悪感」がα=.734で信頼性があると判断した。
各下位尺度の相関を算出した(Table2)。「固定的な集団指向」は「本来感」,「被受容感」
Table1.各下位尺度の記述統計量
と正の影響(r=.17,.16;p<.05)が示された。また,「安心感」との間にも正の影響が示された(r=.29,p<.01.)。「固定的な集団指向に対する罪悪感」「独占的な集団指向に対する罪悪感」との間に負の影響が見られた(r=-.34,-.27,p<.01)。
各下位尺度のt検定の結果をTable3に示す。男女差の検定を行うために,各下位尺度についてt検定を行った。その結果,「独占的な親密関係指向」において,女性よりも男性の方が有意に高かった(t=4.29,p<.01)。
友人グループの人数と各下位尺度の得点について,一要因の分散分析を行った(Table4)。その結果,「独占的な親密関係指向」において有意な差が示された[F(2,194)=3.13,p<.05)]。さらに多重比較を行ったところ「3〜5人」と「9人以上」において有意な差が見られた(p<.05)。
心理的居場所感と罪悪感予期が仲間集団指向性の各下位尺度に及ぼす影響を検討するために,階層的重回帰分析を行った(Table5-8,Figure1-2)。
心理的居場所感と罪悪感予期が固定的な集団指向性に及ぼす影響について検討した(Table5-6,Figure1)。従属変数に固定的な仲間集団指向性を,独立変数はStep2に心理的居場所感と罪悪感予期を投入した。Step2に心理的居場所感と罪悪感予期の交互作用項を投入した。その結果,交互作用が有意であったため単純傾斜検定を行った。独立変数の得点に各平均値±1SDの値をそれぞれ代入し,固定的な集団指向に対する単回帰直線を求めた。その結果,心理的居場所感得点が高い場合に,罪悪感予期と固定的な集団指向性に有意な負の関連が示されたが(b=-.554,p<.01),心理的居場所感得点が低い場合は有意な関
連が示されなかった(b=-.142,n.s)。
Table3.男女差の影響
Table4.グループの人数と独占的な親密関係指向の平均値の比較
Table5.固定的な集団指向を従属変数とした階層的重回帰分析
Table6.固定的な集団指向を従属変数とした単純傾斜の検討
独占的な親密関係指向を従属変数に,独立変数はStep1に心理的居場所感と罪悪感予期を投入した(Table7-8,Figure2)。Step2に心理的居場所感と罪悪感予期の交互作用項を投入した。その結果,分散説明率の増分が有意であった(R²=.02−.09,p<.01)。交互作用が有意であったため,単純傾斜検定を行った。独立変数の得点に各平均値±1SDの値をそれぞれ代入し,独占的な集団指向に対する単回帰直線を求めた。その結果,心理的居場所感得点が低い場合に,罪悪感予期と独占的な親密関係指向に有意な負の関連が示されたが(b=.364,p<.01),心理的居場所感が高い場合は有意な関連が示されなかった(b=-.164,n.s)