合考察

 本研究では,中学生の友人グループに着目し,心理的居場所感と友人グループ外の人と友人グループ内の人とで態度を変えることに対する罪悪感予期が友人グループ外の人であるか友人グループ内の人であるかによって態度を変えることにどのような影響を及ぼすのか検討した。そこで本研究では,心理的居場所感の得点を高群と低群に分け,罪悪感予期の得点の高さによって仲間集団指向性がどのように変化するのか検討した。その結果,固定的な集団指向について友人グループにおける心理的居場所感が高い場合,友人グループ外の人であるか友人グループ内の人であるかによって態度を変えることに対する罪悪感予期が高くなるに伴って,固定的な集団指向の得点が高くなることが示された。つまり,友人グループにおいて居心地の良さや安心を十分に持っていなければ,友人グループ内であるかどうかによって行動や態度を変えることに対する罪悪感予期を強く持っていたとしても,友人グループの内の人だけで固まって行動したいと思う傾向が抑制されないということが示唆された。独占的な親密関係指向性について,心理的居場所感が低い場合,友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期が高まることによって,友人グループ内の人は自分とだけ仲良くしてほしいという感情が高くなることが示された。榎本(2000)は,「自分が本当に友達と思われているか気になる」といった不安を持つことは青年期の友人関係の形態の最終段階である「相互理解活動」に発展させる上で,重要なものであることを示唆している。中学生にとって特定の友人とだけ親しくしたいと思うことは発達の段階において避けられないものであるが,友人グループの中で十分に居場所を得られていないことから,必要以上に友人グループ外の人を仲間に入れない行動傾向はいじめにつながる行動をとる可能性がある(藤原・鵜飼,2009)。学校現場において,友人グループで居心地のよさや安心感を得られるような環境づくりを行うことによって,友人グループ内の人であるか友人グループ外の人であるかによって態度を変えることに対する罪悪感が育まれ,友人グループ外の人と友人グループ内の人で態度を変える行動傾向を抑制することが期待できると考えられる。