本研究では,友人グループにおける心理的居場所感と友人グループ内の人だけで固まって行動しグループ外の人を排他することに対する罪悪感予期が,友人グループ内の人と友人グループ外の人で態度を変える行動傾向に,どのように影響を与えるのか検討することとした。

 本研究では,中学生を対象に,友人グループ内の人だけで固まって行動し友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感を測定するために三島・橋本(2016)の仲間集団指向性尺度と,それと同じ質問項目で文末を「申し訳ないと思う」に変えた罪悪感予期尺度と,友人グループにおける居心地の良さを測定するために則定(2007)の心理的居場所感尺度を使用し,調査した。また,友人グループの人数も調査した。

 心理的居場所感と友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期が仲間集団指向性の各下位尺度にどのような影響を与えるのか検討した。その結果,心理的居場所感の得点が高い場合に,友人グループ内の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期と固定的な集団指向に有意な負の関連が見られた。友人グループにおける心理的居場所感の得点が低い場合は,有意な関連は見られなかったが,友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期が高くなるに伴って,固定的な集団指向の得点が低くなることが示された。

 独占的な親密関係指向については,友人グループにおける心理的居場所感の得点が低い場合に,友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期と,独占的な親密関係指向に有意な正の関連が見られた。友人グループにおける心理的居場所感の得点が高い場合は,有意な関連が見られなかったが,友人グループ外の人を仲間に入れないことに対する罪悪感予期が高くなるに伴って,独占的な親密関係指向を低くすることが示された。

 友人グループにおいて居心地の良さを十分に得られている場合に,罪悪感予期の影響により,友人グループ内の人であるか友人グループ外の人であるかによって態度を変える傾向を抑制することが明らかとなった。中学生の友人グループにおいて,友人グループ内の人であるか友人グループ外の人であるかによって行動や態度を変える傾向を抑制するために,友人グループ内における安心感や居心地の良さを高めるよう支援を行っていくことが必要である。