質問紙調査を実施した。
尺度としては,①斎藤・中村(1987)の改訂版対人的志向性尺度②大坊(2007)のコミュニケーション尺度であるENDCOREs③小山・池田(2011)の改訂版遠慮・察しコミュニケーション尺度,④菊池(1988)のKiss-18 を用いた。
①改訂版対人的志向性尺度について
“人間関係志向性”9項目,“対人的関心・反応性”5項目,“個人主義傾向”3項目3因子から構成されている。遠慮・察しコミュニケーションとの関連を見るために,パーソナリティとしての対人関係の在り方と遠慮・察しコミュニケーションとの関連を見ることを目的としている。対人関係の中でのパーソナルティを中心に見るため,今回は,原著の尺度から「自分は自分,他人は他人と割り切って物事を考える方である《「人のことは構わずマイペースで行動する方である《「あまり人のことには立ち入らない方である《3項目から成る“個人主義傾向”因子を削除して使用した。また,原著の「8.逆:仕事上の付き合いでは,個人的に親しくなることは重要ではない。《は,本研究の対象者である大学生には「仕事《という言葉から人付き合いを想定させて回答させることは適していないと考え,「8.逆:大学の授業におけるグループ活動では,個人的に親しくなることは重要ではない。《とした。
②ENDCOREsについて
“自己統制”“表現力”“解読力”“自己主張”“他者受容”“関係調整”6因子から構
成されており,各因子の項目数はいずれも4項目である。
仮説で扱っているのは対人的志向性と関係調整能力であるため,当初はENDCOREsから関係調整スキルのみ扱うことを計画していた。しかし,遠慮・察しコミュニケーション尺度に関する先行研究が少なく,仮説の証明にENDOCOREsから関係調整スキルのみ扱うのは上十分だと考え,全スキルを扱った。
原著では,21,22はそれぞれ「人間関係を第一に考えて行動する。《「人間関係を良好な状態に維持するように心がけ,行動している《という項目であったが,友人関係を想定する本研究の方法に則り,「人としてのつながりを第一に考えて行動する。《「友人としての関係を良好な状態に維持するように心がけ,行動している。《とした。
③改訂版遠慮・察しコミュニケーション尺度について
スキルとして遠慮・察しコミュニケーションを効果的に使われている場合とそうでない場合を明確にするために,独自の11項目を追加した。遠慮することが日本文化的,あるいは一種のアサーティヴ的な効果をもたらすことを想定した項目として,「1.場の空気や状況に応じて,何を言うべきでないかを判断できる。《「2.意図的に曖昧な言い方をして,相手に伝えたいことを伝えられる。《「3.ためらうことなく,相手に質問をしたり,頼みごとをすることができる。《「4.相手に対して言いにくいことを,相手に配慮した言葉で伝えられる。《「5.相手に対して言いにくいことを,相手に配慮した言葉で伝えられる。《の5項目を追加した。逆に,曖昧化が過度になされて相手にこちらの意図が伝わらなかったり,逆に無遠慮で率直すぎる表現により相手を傷つけてしまったりといった,遠慮することがコミュニケーション・スキルとしてうまく扱えてない場合を考慮した項目として,「11.場の空気や状況にふさわしくない言動をしてしまうことがある。《「12.言い方が率直すぎて,相手を傷つけてしまったと感じたことがある。《「13.言葉足らずで,伝えたいことが伝えきれず,相手に誤解を生じさせたことがある。「14.相手にどう思われるかが気になり,言いたいことが言えない。《「15. 相手にどう思われるかが気になり,言葉や表情を濁すことがある。《の5項目を追加した。
加えて,原典の一部の項目を,「~することができる《とした。
今回は,遠慮・察しコミュニケーションにおいて親密性が高い場合と親密性が低い場合の2つを想定する必要があるため,この尺度のみ,被験者に「親しい同期の友人《を想定させる設問と,「会ったばかりの友人(先輩・後輩を除く)《を想定させる設問の2つの質問紙を用意し,被験者間で分かれるように調整した。
1. 調査対象
2. 調査時期
3. 質問紙の構成