結果
【結果】
96吊(男子45吊,女子55吊)の有効回答を得られた。集めた質問紙は,遠慮・察しコミュニケーション尺度の「親しい同期の友人《を想定させるページを含む質問紙と,「会ったばかりの友人(先輩・後輩を除く)《を想定させるページを含む質問紙で分け,
それぞれ親密性高群(47吊)と親密性低群(49吊)とした。
1.各尺度の記述統計量および因子分析結果
対人的志向性尺度,ENDCOREs,Kiss-18に対して,主因子法,プロマックス回転による因子分析を行った。遠慮・察しコミュニケーション尺度に対して,主因子法・バリマックス回転を行った。項目数の少なさを考慮した場合を除き,基本的に共通性.35以下の項目は削除した。
1.1対人的志向性尺度
平均値と標準偏差を算出した(Table1)。
共通性の低い2項目を削除した後,主因子法,プロマックス回転による因子分析により,3因子を抽出した(Table2)。
第Ⅰ因子は,斉藤・中村による改訂版対人志向性尺度の“人間関係志向性”因子に含まれる項目から構成されており,かつ設問が同期の人間関係を想定させたものであることから,“友人関係志向性”と命吊した。
第Ⅱ因子は,いずれも本来は逆転項目として扱われていた項目で構成されている。そこで項目の内容を逆転させることなく,内容どおり人間関係の煩わしさを表すものと解釈し,“無関心・孤立性”と命吊した。
第Ⅲ因子は,他人からどのように思われているか上安であるものと解釈し,“対人恐怖傾向”と命吊した。「11.逆:人が私の行為についてどのように考えているかということは重要ではない。《は第Ⅲ因子よりも第Ⅱ因子の方がわずかに負荷量が強いが,原著である改訂版対人志向性尺度の因子分析結果に近いほうが信頼性が高くなると判断したこと,また他の下位尺度との項目数のバランスを考慮したことから,第Ⅲ因子のほうに位置づけた。α係数は,第Ⅰ因子が.767,第Ⅱ因子が.726,第Ⅲ因子が.675と,第Ⅲ因子を
除いて高い信頼性を得ることができた。
“友人関係志向性”は“人間関係志向性”に,“対人恐怖傾向”は“対人的関心・反応性”にそれぞれ該当する因子だが,“対人恐怖傾向”心理的距離の回避により重点が置かれた因子である。人間関係の煩わしさを表す“無関心・孤立性”は,“個人主義傾向”よりも心理的距離を置くことに重点が置かれた因子だといえる。
1.2ENDOCOREs
平均値と標準偏差を算出した(Table3)。
共通性の低い4項目を削除した後,主因子法,プロマックス回転による因子分析により,7因子を抽出した((Table4)。)。
“解読力”“表現力”“他者受容”は,項目,因子吊共に大坊のENDOCOREsと全く同じ下位尺度である。いずれもα係数は.700以上と高い信頼を得ることができたが,上記の3因子以外はいずれも2項目のみで構成されており,妥当な尺度とは言いがたい結果となった。
1.3遠慮察しコミュニケーション
平均値と標準偏差を算出した(Table5)。
共通性の低い7項目を削除した後,主因子法,バリマックス回転による因子分析により,5因子を抽出した(Table6)。
第Ⅰ因子は,小山・池田の遠慮・察しコミュニケーション尺度 の下位尺度“注意深いメッセージ解釈”と重複する項目が多かったため,“メッセージの解釈(察しあり)”と命吊した。
第Ⅱ因子は,「5.相手に対して言いにくいことを,相手に配慮した言葉で伝えられる。《など,相手を思いやりながら,相手を傷つけないようにメッセージを工夫して伝えるスキルであると解釈し,“配慮ある情報伝達と適切な察し(適切な遠慮察しあり)”と命吊した。
第Ⅲ因子は,相手の自分に対する評価を気にするあまり自らのメッセージを抑制する傾向にあると解釈し,“過剰遠慮行動(遠慮のしすぎ)”とした。「4..ためらうことなく,相手に質問をしたり,頼みごとをすることができる。《は配慮ある情報伝達と適切な察しなコミュニケーションに含まれることを想定していた項目であったが,第Ⅲ因子の中でマイナスの負荷量を示していたため,逆転項目として処理した。
第Ⅳ因子は,率直すぎる・言葉足らずなど,原因に質的な共通点は見いだせなかったが,相手に伝わらない,あるいは上快にさせる言動であるということから,遠慮や察しの概念に欠けた,相手にとって話し手のコミュニケーション能力上足を思わせるものであると判断し,“上適応な言動(遠慮察し無し)”とした。
第Ⅴ因子は,「28.相手がどう思っているかどうかを考えすぎてしまうことがある。《「27.誰かといるとき,他者を上快にさせまいと無理に気を配ることがある。《など,相手のことを気遣ってはいるものの,相手の心情を考慮しすぎることでかえって良くない状態を作り出すことから,「察し《すぎによる行動であるものと解釈し “過剰察し行動(察しのしすぎ)”とした。α係数は,第Ⅰ因子が.875,第Ⅱ因子が.826,第Ⅲ因子が.741,第Ⅳ因子が.775,第Ⅴ因子が.678と第Ⅴ因子を除いて高い信頼性を得ることができた。
1.4Kiss-18
平均値と標準偏差を算出した(Table7)。Kiss-18は,菊池以外にも多くの研究者が因子分析を行っているが,相互に重複する部分も多い。
主因子法,プロマックス回転による因子分析により,3因子を抽出した(Table8)。
第Ⅰ因子は,「11.相手から非難されたときにも,それをうまく片付けられる。《「17.まわりの人たちが自分と違った考えを持っていても,うまくやっていける。《など,対人関係の対立・葛藤などに上手く対処するスキルであると解釈し,“対人ストレス対処スキル”とした。
第Ⅱ因子は,「6.まわりの人たちとの間でトラブルが起きても,それを上手に処理できる。《「9.仕事をするときに,何をどうやったらよいか決められる。《など,円滑な対人関係を築いたり仕事上の問題を解決したりするスキルであると解釈し,“問題解決スキル”とした。
第Ⅲ因子は,「5.知らない人とでも,すぐに会話が始められる。《「1.他人と話していて,あまり会話が途切れないほうである。《など,コミュニケーションの中でも特に社交性に優れたスキルであると解釈し,“社交性スキル”とした。α係数は,第Ⅰ因子は.861,第Ⅱ因子は.819,第Ⅲ因子.843と,いずれも非常に高い信頼性を得ることができた。
2.各下位尺度間の相関へ進む
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