本研究の限界と今後の課題


  研究では子どもからみた両親の関係の質をコミットメントとして測定し,コミットメントを家族の健康性を規定する上での指標として用いた。両親が結婚生活を継続している理由を,機能的な面ではなく人格的な面で必要としており,お互いを信頼していることが家庭内のコミュニケーションや凝集性を高め,家族としての健康性を高めることができると考えた。そして,家族が健康であることが子どもの意識やスキルに影響を及ぼすことが明らかになった。しかし本研究では家族の健康性を夫婦のコミットメントから捉え,コミュニケーションと凝集性を規定したが,実際の家族のコミュニケーションや凝集性は測定していない。そのため,夫婦関係が家族の健康性を規定するという仮定のもとでの結果であると言えよう。
  本研究では,子どもが認知する両親のコミットメントを測定し,家族の健康性を規定したが,両親の関係のみから家族を捉えており子どもを含めた3者間で家族を十分に捉えているとは言い難い。草田(1994)は家族成員間の心理的距離が近い方が家族の健康度が高いことを指摘している。一方,茂木(1996)は子どもの認知する父母および父子の距離が近く母子の距離が離れている方が子どもの精神的健康を高めることを示している。つまり,夫婦関係のみに着目することは健康な家族を捉える上で不十分であることが考えられ,夫婦関係を基盤として,さらに子どもを含めた3者間の関係を捉えることが必要であるだろう。
  また,笑いに対する意識については意識のみを測定しており実際に行動として笑いを用いているのかということまでは確認できていない。更に,斎藤(2013)は,親と肯定的な関係をもつ青年は親と一緒にいるときに笑う傾向にあることが示唆していることから,家族が健康であることは子どもの笑いに影響を及ぼすと考えた。しかし,社会的スキルとしての作り笑いは,笑いを社会的スキルとして捉え作り笑いに限定したものである。そのため,子どものスキルとしてポジティブにもネガティブにも働く要因となったのだろう。笑いのスキルに関しては作り笑いに限定せず,笑いに対する意識に含まれる機能も含めた広義での笑い行動を検討する必要があるだろう。