要旨



本研究は,話し合い場面において,自らが少数意見者となった時に,社会的支持者の存在による主観的なサポート受容感の生起によって,多数派意見に同調せずに意見を維持し,グループ内の他者に向けて主張できるのかということについて検証したものである。また,公的自己意識に着目し,主観的なサポート受容感による不安感低減への効果についても検討した。少数派である社会的支持者のサクラと被験者の2人,多数派のサクラ4人で構成されるメンバーで話し合いを行う支持者有群と,少数派である被験者1人と多数派のサクラ5人で構成されたグループで話し合いを行う支持者無群に分け,それぞれ6人で二者択一のテーマについて10分間話し合いを行い,比較して検討を行った。

分析方法については,被験者データが絶対的に少なかったため,群ごとの大まかな傾向や被験者個人に焦点を当てて行った。

まず,社会的支持者と意見維持の関連について検討をした結果,主観的なサポート受容感は,支持者有群の方が支持者無群よりも有意に高いことがわかったが,意見の維持・変容については個人差が見られた。これらのことから,社会的支持者の存在によって主観的なサポート受容感は生起されるが,必ずしも意見の維持につながるとは言えないと考えられる。

次に,社会的支持者と発言回数の関連について検討した結果,発言時間は,支持者無群の方が支持者有群よりも有意に高いことが示され,社会的支持者がいない方が少数意見者の発言は活発になるということが示唆された。

最後に,公的自己意識と不安感低減の関連について被験者個人に焦点を当てて検討した結果,支持者有群の中で公的自己意識の高い被験者2人は,共に主観的サポート受容感も高い得点を示していたが,不安感について1人は大きく低減し,もう1人の軽減の程度は少なかった。したがって,公的自己意識と主観的なサポート受容感が共に高く,不安感が大きく低減する被験者は見られたが,不安感低減への影響としてテーマへの関心度など他の要因も関わることが示唆された。

以上より,話し合い場面において,少数意見者は社会的支持者の存在によって主観的にサポート受容されていると感じるが,直接的に意見の維持や不安感の低減につながるとは言えないことが示された。発言回数は,本研究では社会的支持者がいない方が発言は活発になることが示唆された。公的自己意識の不安感低減への効果について,公的自己意識の高い者で不安感が大きく低減する被験者は見られたが,低減の程度には個人差があった。公的自己意識の高群と低群を比較できるよう,被験者を増やして再度検討を行う必要があるだろう。



top