本研究は、テスト不安をコントロールする要因として学習者が選択・使用する学
習方略、学習者が持つテスト観に着目し、それらが、テストが近づくにつれて変化
する不安にどのような影響を与えているのかについて検討することで不安をコント
ロールするための具体的な方法を明らかにすることを目的としていた。そのために
本研究において、高校生を対象にテスト観や学習方略がテスト不安や結果不安にど
のように影響を与えているのかについて複数回の調査を通して検討した。
本研究では高校1年生を対象に、テスト状態不安、特性不安、テスト不安、テ
スト観、数学苦手意識、学習方略、自分の得点の相対予想、テスト結果不安、テ
スト得点、予想点と実際点の差について4回にわたる質問紙調査を用いて尋ねた。
そして、各項目からテスト1週間前のテスト状態不安への影響、テスト結果不安
への影響、テスト返却後の得点・不安への影響について検討し、どの要因が、テス
トが近づくにつれて変化する不安や結果不安に影響をもたらしているのかについて
明らかにした。
調査の結果、テスト不安の高い生徒はテストへの対策として様々な方略を選択・
使用すること、「比較テスト観」を持つとテスト1週間前にテストから逃げようと
する思考が働くこと、「社会的方略」を使用するとテスト1週間前のポジティブな
思考に繋がること、「比較テスト観」や「改善テスト観」を持つことや「暗記反復
方略」を使用することはテストの結果を気にする思考に繋がること、テストの結果
を気にするほどテストで高い得点を取っていること、「改善テスト観」を持つと次
回のテストに向けて対処をするという思考に繋がることが明らかになった。
本研究の結果から、テスト不安が高い生徒において、定期テストは次の学習につ
なげるためのものだと認識することでテストに対してポジティブな思考を持つこと
ができ、不安を感じにくいことが考えられる。また、友達と勉強したり、勉強につ
いて話す機会を設けることで、テストが近づいてもポジティブな思考を持ち続ける
ことができるため、不安をより高めることなくテストに臨むことができると考えら
れる。