今後の課題と展望
本研究では、伊勢神宮に焦点を当てて、諸々の検討をしてきたが、今後の課題と展望ということで、反省点なども挙げておきたい。
事例検討については、個人の「信仰」の部分というと、心の奥底にある大変プライベートでセンシティブな部分あり、初対面であるインタビュアーにすべて話をしてくださったかは分からない。それぞれの方と初対面であり、インタビュアーである私がインタビュー協力者の方々のすべてを聞き出せたかと言えば、完全ではないと思う。私の力不足も一要因である。
また、今回は、楽生として伊勢神宮に関わっている人にはインタビューできたものの、実際に神職として常勤として伊勢神宮に関わっている人には、インタビューできなかった。恐らく、深い信仰心を持って仕事をしているという人が多いと思われるが、一方で、完全に仕事場としてとらえている人もみられると考えられる。そうした中で、伊勢神宮をどのようにとらえているのか、考えているのか、ということについて、もう少し深く聞いていきたかった。
さらに、今回は、伊勢神宮に参拝したことのある人という立場の人にインタビューを行ったが、伊勢神宮に実際に行ったことが無い人にも聞いてみるのも良かったのではないかと感じた。来たことがない人の伊勢神宮への印象であったり、伊勢神宮に対する感情を知ったりすることで、伊勢神宮に来たことがある人との比較対象になったのではないかと推測する。
もっとインタビュー対象者を精査するとともに、自分自身もインタビュアーとして雰囲気であるとか、インタビューの進め方などを工夫する必要があったと感じる。
今回は、伊勢神宮に焦点を当てて検討をしてきたが、伊勢神宮の特殊性のごくわずかな一端が見えたに過ぎない。最初の論考で記述したように、伊勢神宮のなかにも様々な多数の神が祀られており、それぞれの検討はしていない。地元で深い信仰心を持つ人にあっては、伊勢神宮内のそれぞれの神様への思いもあると推測され、コアな氏子の立場にある人の信仰心などは、もう少し明らかにできるとよかったと思う。
また、日本には他に、出雲大社や熱田神宮、明治神宮など大きな社はたくさんある。それぞれ祀っている神が違うので、その社での考え方や祀る趣旨も異なるところがあると言える。同じ神道ではあるが、信仰の在り方は違う点もあると考えられる。本研究ではそこまでは迫れておらず、今後の課題である。
今後の展望としては、上記同様、神道における信仰という点で、ひとくくりに説明できることと、それぞれの神社に由来する信仰の在り方が異なる部分があるわけで、もう少し細かく、神と人間の関係を検討していくことが挙げられる。人間にとって神との関係は、人間が生きていく上で、拠り所として、ここ日本でも、案外大きなものではないかと思っているからである。