6. 自己切替スタイルの男女差について
6-1. 男女差と自尊感情の関連について
男性13名,女性17名の自尊感情の平均値の違いについて検討した。これより,状態自尊感情,特性自尊感情の平均値とともに,男性の方が少し高い傾向にあることがわかった。
6-2. コミュニケーションスタイルの違いについて
友人関係に関する話の中で出てくる言葉に男女で違いがあった。男性は,友人関係について話す中で「面白いか,面白くないか」を基準としている様子が多く見られる傾向にあった。具体例としては「この人は普通に面白い。この人は行動が面白い。」「この人にはぼけてつっこむ。」といった発言である。一方,女性の方は,関わりの中で「共感できるか,できないか」を基準として話を進める場面がよく見受けられた。具体例として「この人は価値観や考え方が自分と似てるから、素を出せる。」「一緒に悩んでくれる。」などである。これより,女性は自分と価値観が近かったり,共感したりできる友人の方により素を出せる傾向にあると考える。
6-3. 質問項目3, 4の回答の男女差について
インタビューの3, 4の回答についても,男女で差が見られた。まず,3で「もし自分が表彰されたら,この5人の友人に同じように言いますか」という質問に関して考察する。
6-4. 質問項目3, 4の回答の男女差について
男性は,「全員に同じように言う」という回答が13名中8名であった。それ以外の回答をした人については,「全員に伝えるが相手によって伝え方が違う」と回答した人が3名,「伝えない人がいる」と回答したのは2名,「誰にも伝えない」と回答した人はいなかった。一方,女性に関しては「全員に同じように言う」と回答した人は17名中4名であった。それ以外の回答については「全員に言うが,相手によって伝え方が違う」と回答したのが8名,「一部の人にのみ話す」と回答したのが4名,「誰にも伝えない」と回答した人も1名いた。この結果より,女性は男性よりも,自分に起こったいいことを伝える際に,相手の性格や,自分の言うことがどのように伝わるかを気にしてより細かく切替をしていることが考えられる。
次に質問項目4の「5人が知らないあなたの友人に対して悪感情を抱いたとき,5人に同じように言いますか」の回答に関して考察する。男性は「全員に同じように言う」「全員に言うが相手によって伝え方が違う」と回答した人はおらず,「一部の人にだけ伝える」と回答したのが4名,「誰にも言わない」と回答したのが9名であった。一方女性は「全員に同じように言う」と回答したのが1名,「全員に話すが相手によって伝え方が違う」と回答したのが3名,「一部の人にのみ話す」と回答したのが9名,「誰にも伝えない」と回答したのは4名であった。これより,男性よりも女性の方が他人に対する悪感情について友人に話す傾向が強いと言える。前項のコミュニケーションスタイルの違いについて、男性は「面白さ」をより求め,女性は「共感」をより求めるという結果が出た。この傾向は,今回の「自分に起こった良いこと,または他の友人への悪感情を友人に話すか」という質問でも反映されていると言えるであろう。具体例として男性では「この話あまり面白くないので…」女性では「自分の意見も言ってくれるし、共感もしてくれるし愚痴っぽく言うかな」などがあった。これより、男性は「面白さ」を求めるために「面白くない」人の悪口は控える傾向にあり,女性は「共感」を求めるためにより「共感を得られやすい」人の悪口を人に言う傾向にあるのではないだろうかと考える。