【仮説】
仮説1:パーソナリティ(K-AP者/S-AP者/KS-AP者)に合致した活動を多く行う。
身体的活動に価値を見出しやすい人は身体的活動を,社交的活動に価値を見出しやすい人は社交的活動を多く行うだろう。また,どちらの活動にも価値を見出しやすい人はどちらの活動も均等に行っていると予想される。
仮説2:パーソナリティ(K-AP者/S-AP者/KS-AP者)に合致した活動でフローに入りやすい。
パーソナリティと合致した活動に対し価値を見出しやすく,その活動を多く行っているとすれば,パーソナリティと合致した活動でフローに入りやすいと予想される。
仮説3:パーソナリティ(K-AP者/S-AP者/KS-AP者)に関係なく,社交的フローよりも身体的フローの方がフロー没入度は高い。
チクセントミハイ(2010)は,社交的活動は一般的に非常にポジティブな経験だが,めったに深い精神集中を伴わないため,フローに入りづらいと述べている。一方で,身体運動的活動は深い精神集中を伴い,フローに入りやすい。これらのことから,身体的フローと社交的フローを比較すると,社交的フローに入りやすい人は深いフローを経験しづらいといえる。つまり,社交的フローはマイクロフロー体験から深いフロー体験へと移ることが少ない。従って,身体的フローはフローの連続体上で,深いフローへと入りやすいが,社交的フローはフローの連続体上にあるものの,深いフローへとは結びつきにくい型であるといえる。そのため,身体的フローと社交的フローを比較すると,身体的フローの方がフロー没入度が高いと予想される。
仮説4:パーソナリティ(K-AP者/S-AP者/KS-AP者)に関係なく,フロー経験が多いほど心理的well-beingが高い。
佐橋(2003)は,できるかぎり多くの経験場面をフロー化することが,生活全般の質,well-being向上につながると述べている。そのため,パーソナリティと合致した活動でのフロー体験かどうかに限らず,フロー経験が多い人ほど心理的well-beingの得点が高くなると予想される。
仮説5:同じフロー経験の多さであればパーソナリティに合致したフロー経験が多いほど,心理的well-beingは高い。
フロー経験の多さが同じであれば,パーソナリティと合致した活動で入ったフロー経験の方が満足度が高いだろう。そのため,パーソナリティと合致したフロー経験が多いほど心理的well-beingが高いと予想する。
仮説6:疎外感得点はS-AP者,KS-AP者,K-AP者の順で高い。
Csikszentmihalyi & Graef (1975a)の調査で身体的フローを経験している人の方が社交的フローを経験している人に比べて疎外感得点が高かった。そのため,K-AP者が最も疎外感得点が高くなるだろう。そして,社交的フローも経験するが身体的フローも経験しやすいKS-AP者が次に疎外感得点が高くなる。そして,最後に他者との関わりの中でフローに入りやすいS-AP者が最も疎外感得点が低くなると予想される。
仮説7:自己知覚は身体的フロー頻度が高いほど自己をプラスに評価し,社交的フロー頻度が高いほど自己をマイナスに評価する。
Csikszentmihalyi & Graef (1975a)の調査より,身体的フローを感じる人々は自己をプラスに捉え,社交的フローを感じる人々は自己をマイナスに捉えることが明らかとなっている。そのため,身体的フロー頻度が高いほど自己をプラスの評価,社交的フロー頻度が高いほど,自己をマイナスに評価すると予想される。
仮説8:活動に対する挑戦水準は,S-AP者,KS-AP者,K-AP者の順で高い。
身体運動的活動と社交的活動では活動に向ける注意集中に差がある。身体運動的活動では,活動に対し強い注意集中が必要であるのに対し,社交的活動では強い注意集中が必要でない。これより,身体運動的活動の方が社交的活動より高い挑戦水準が求められる。そのため,日常生活で行う活動の挑戦水準はK-AP者が最も高くなるだろう。そして,S-AP者,KS-AP者の順で高くなると予想される。
仮説9:活動での経験の質(集中度・満足度・楽しさ・コントロール感・無我の程度・他者無意識の程度)は他者無意識の程度以外でフロー状態が最も高く,アパシー状態が最も低い。
フロー状態は活動に対し,強い集中と楽しさが伴っているが,アパシー状態はその正反対である。そのため,活動への満足度も対極に位置するだろう。従って,活動での経験の質はポジティブな側面とフロー状態の関係が強く,アパシー状態とは最も弱い関係を示すと予想される。