3. 共分散構造分析による検討(質問フォームA)
3.1.「後悔直後の気そらし」から「外傷後成長前の反すう」への影響
後悔を感じた直後, 数週間の間の気分転換的気そらしと回避的気そらしが, 外傷後成長を遂げる直前, 数週間の間の意図的熟考, 侵入的熟考に与える影響を当時の後悔の大きさで統制して検討するため, 当時の後悔の大きさ, 気分転換的気そらし, 回避的気そらしを独立変数, 外傷後成長を遂げる直前, 数週間の間の意図的熟考, 侵入的熟考を従属変数とし, 共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 2に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正し, 有意でない影響を削除し再度分析を行った. その結果, 十分な適合度を得たと判断したため, このモデルを採用した. Figure 3にこの修正モデルを示す. 「当時の後悔」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「当時の後悔」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ, 「気分転換的気そらし」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「気分転換的気そらし」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ有意な正の影響が見られた(順に, β=.237 p<.01, β=.295 p<.001, β=377 p<.01, β=274 p<.05). しかし, 「回避的気そらし」から「外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考」への有意なパスは見られなかった.
3.2. 「後悔直後の反すう」から「外傷後成長前の反すう」への影響
後悔を感じた直後, 数週間の間の意図的熟考と侵入的熟考が, 外傷後成長を遂げる直前から数週間前の間の意図的熟考と侵入的熟考に与える影響を検討するため, 後悔した直後の意図的熟考と後悔した直後の侵入的熟考を独立変数, 外傷後成長前の意図的熟考と, 外傷後成長前の侵入的熟考を従属変数とした共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 4に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した. その結果, 十分な適合度を得られたため, このモデルを採用した. Figure 5にこの修正モデルを示す. 「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長前の意図的熟考」へ, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ有意な正の影響が見られた(順にβ=.716 p<.001, β=.817 p<.001). しかし, 「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長前の侵入的熟考」へ, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長前の意図的熟考」への有意なパスは見られなかった.
3.3. 「後悔を感じ始めてからの経過期間」と「後悔直後の熟考」から「外傷後成長」への影響
非行為後悔を感じ始めてからの経過期間と後悔直後の意図的熟考と侵入的熟考が外傷後成長へ及ぼす影響を検討するために, 後悔を感じ始めてからの経過期間と後悔直後の意図的熟考・侵入的熟考を独立変数, 外傷後成長を従属変数として, 共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 6に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した. その結果, 十分な適合度が得られたため, このモデルを採用した. Figure 7にこの修正モデルを示す. 「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長」へ有意な正の影響が見られた(β=.674 p<.001). しかし, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長」への有意なパスは見られなかった.
3.4.「外傷後成長前の熟考」から「外傷後成長」へ与える影響
非行為後悔を感じ始めてからの経過期間と外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考が外傷後成長に与える影響を, 後悔を感じ始めてからの経過期間で統制して検討するため, 行為後悔を感じ始めてからの経過期間と外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考を独立変数, 外傷後成長を従属変数とした共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 8に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した. その結果, 十分な適合度が得られたため, このモデルを採用した. Figure 9にこの修正モデルを示す. 「外傷後成長前の意図的熟考」から「外傷後成長」へ有意な正の影響が見られた(β=.612, p<.001). しかし, 「外傷後成長直前の侵入的熟考」, 「経過期間」から「外傷後成長」への有意な影響は見られなかった.
3.5.「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長前の意図的熟考」に与える影響
「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長前の意図的熟考」に与える影響を検討するために, 「外傷後成長前の意図的熟考」を従属変数として, 「気分転換的気そらし」(高・低群)×「後悔直後の意図的熟考」(高・低群)の重回帰分析を行った(これ以降で行う重回帰分析やt検定においては, 共分散構造分析に用いた項目の平均値によってそれぞれの項目の得点を産出している). その結果, 「気分転換的気そらし」×「後悔直後の意図的熟考」の交互作用は有意ではなかった(β=.527, n.s.). Figure 10にグラフを示す. しかし, 「気分転換的気そらし」と「後悔直後の意図的熟考」に主効果 (順に, β=.210, p<.01; β=.527, p<.01)が見られたため, 単純主効果の検定を行った. その結果, 「気分転換的気そらし」については, 高群・低群それぞれにおける「後悔直後の意図的熟考」の単純主効果(β= .565 , p<.01 ; β=.489 , p<.01)が有意であり, 「後悔直後の意図的熟考」が高いほど, 「外傷後成長前の意図的熟考」が高かった. 「後悔直後の意図的熟考」については, 低群における「気分転換的気そらし」の単純主効果(β= .248 , p<.01)が有意であり「気分転換的気そらし」が高いほど「外傷後成長前の意図的熟考」が高かった. 「後悔直後の意図的熟考」高群における「気分転換的気そらし」の単純主効果(β= .172 , p<.10)が有意傾向であり, 「気分転換的気そらし」が高いほど「外傷後成長前の意図的熟考」が高かった.
3.6. 「気分転換的気そらし」, 「後悔直後の意図的熟考」, 「外傷後成長前の意図的熟考」が「後悔の低減」に与える影響
外傷後成長を遂げることに有効であった「後悔直後の意図的熟考」, 「外傷後成長前の意図的熟考」から「後悔の低減」へ及ぼす影響を検討した. まず, 「当時の後悔の大きさ-現在の後悔の大きさ」を行うことで「後悔の低減得点」を算出した. 次に, 平均値を基準として「気分転換的気そらし」高・低群, 「後悔直後の意図的熟考」高・低群, 「外傷後成長前の意図的熟考」高・低群に分け, それぞれ「後悔の低減得点」に有意差があるかどうか検討するために片側検定の対応のないt検定を行った. その結果, 「気分転換的気そらし」高・低群, 「後悔直後の意図的熟考」高・低群では有意な結果は得られなかった(順に, t(154)= 1.716, n.s.; t(154)= .927, n.s.).一方, 「外傷後成長前の意図的熟考」の高・低群においては, 「後悔の低減得点」の平均値の差に有意傾向があった(t(154)= 1.696, p<.10)(Figure 11). 「外傷後成長前の意図的熟考」高群の方が低群よりも「後悔の低減得点」高い傾向にあった. また, 「当時の後悔の大きさ」と「現在の後悔の大きさ」に有意差があるかどうか検討するために, 片側検定の対応のあるt検定を行ったところ, 有意な結果が得られた(t(156)= 5.358, p<.001) (Figure 12). 「当時の後悔の大きさ」よりも「現在の後悔の大きさ」の方が有意に低かった.
←back/next→