結果と考察


6.本来感,自己受容の変化の原因の検討

<5日間の記録から>
 ここから,本来感,自己受容の得点上昇または下降の背景に,どのような経験や心情の変化があったのかを検討するため,5日間の記録を詳細に分析していく。分析は,選んだ強みの種類,強みが活用できなかった日の記述,活用回数,活用方法,活用感に焦点を当てて行う。

 [選んだ強みの種類]
 強みの種類をみると,大きく2つのタイプに分けられると考えられる。1つは,自分一人で気付き,活用し,達成感を得ていく「自己達成」タイプである。もう1つは,周りの人や仲間との関係において自分が活用したり,相手の恩恵を受けたりする「相互関係」タイプである。前者には,人と違う見方や仕方をすることを指す「創造性」や粘り強いことを指す「忍耐力」,謙虚であることを意味する「慎み深さ」が,後者には,恵まれていると感じることを意味する「感謝」や人に笑顔をもたらすことを意味する「ユーモア」が当てはまると考えられる。
 下位の生徒では,創造性,忍耐力,注意深いことを意味する,思慮深さといった,自己達成タイプが目立ったが,相互関係タイプである,感謝,ユーモアを選んだ生徒もいた。一方,上位の生徒では,審美眼,社会的知性,感謝,ユーモア,超越性が選ばれた。これらは,下位で選ばれた強みと大きな違いはなかった。
 これより,選んだ強みが本来感,自己受容の得点変化に作用していることはあまりなさそうだと考える。しかし,下位の生徒において,自己達成タイプが多く見受けられたことから,他者との関わりがあまりなかったことが,本来感,自己受容の得点下降の一要因になったととらえることもできるだろう。「相互関係」タイプの強みと比較して,他者関係の中で活用することがあまりない「自己達成」タイプの強みの場合,成果が見えづらく,相互関係もあまりないことから,上手く活用できたかどうかの判断も自分に委ねられることとなる。自己達成タイプの強みを選んだ生徒に対して,他者からのフィードバックを受ける機会を設けることが,本来感,自己受容の得点の上昇につながるのではないかと考察する。



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