結果と考察
5.介入前後の本来感,自己受容の変化
強み介入前後の本来感,自己受容の得点差を検証するために,対応のあるt検定を行った(Table6)。なお,平均値は,介入前後の差得点を示している。結果は,本来感(t=-0.696),自己受容(t=-1.317)であり,介入前後で有意な差はみられなかった。
有意差が見られなかった理由として,以下の2点が考えられる。
第1に,介入期間の問題である。今回は,連続した5日間の介入であったが,期間が短かったために結果として表れにくかったのではないかと考えられる。先行研究では,1週間(7日間)介入を行ったものが多い(阿部ら,2021,伊住,2015,森本ら,2015,)。このように,介入期間を延ばすことで,介入前後の変化がより表れやすくなるのではないかと考えられる。
第2に,生徒たちの強み理解,自己理解の経験についてである。本研究における生徒たちにとって,今回のように自分をみつめ,強みについて考える活動は初めてであったと考えられる。これより,生徒たちは,介入前には自分らしさや自己を受け入れる感覚を判断する基準が定まっていなかったが,介入を通して自分を見つめ直すことにより,介入後には,自己判断の基準が個々に明確になったからではないかと考えられる。先行研究では,介入前にクラスで活動を行い,友達の強みをみつける活動や自分の強みをみつける活動の時間を設け,強みの理解を深めた上で介入期間に入るものも見受けられる(阿部ら,2021)。このように,介入前の活動の目的を明確にして設けることで,生徒たちの強み理解と自己理解がより深まり,介入前後の変化が表れやすくなるのではないかと考えられる。
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