方法
1.調査対象
研究目的と調査内容への同意が得られた,第一志望ではない大学に通う大学2年生(7名)を対象にインタビューを行った。
2.調査期間
調査は2021年11月下旬に実施した。
3-1.調査方法
半構造化面接を行った。調査開始前に,「コロナ禍における入学者の大学適応までのプロセスの研究」の説明として,研究の意義・目的,研究方法,倫理面の配慮について説明を行った。また,インタビュー内容はICレコーダーで録音し,逐語録を作成して分析すること,得られたデータは文章を細かく分断するため,個人が特定されることはないこと,本研究以外では使用しないことを伝え,本研究の趣旨に同意を得られた上で回答を得た。はじめに,調査協力者にフェイスシートを記入してもらい,その後1人あたり1時間程度のインタビューを行った。フェイスシートの内容は以下に示す。
①現在通う大学・学部・学科
②第一志望の大学・学部・学科
③浪人経験の有無
④志望校を変更したタイミング
⑤入学する大学を決定したタイミング
⑥現在通う大学に合格した時の気持ち
⑦大学1年生終わりの大学生活に対する気持ち
⑧現在の大学生活に対する気持ち
⑨私立の受験状況・合格状況
インタビューは,大学内の教室や実験室にて行った。インタビュー項目について以下に示す。
①高校生の時に大学をどのような場所だと思っていたか
②第一志望をいつごろどのような理由で決定したか
③第一志望を変更した理由
④進路や志望校について考えていたことや出来事
⑤志望校を変更するまでに考えていたことや出来事
⑥志望校を変更してから入学する大学を決定するまでに考えていたことや出来事
⑦入学する大学を決定後実際に入学するまでに考えていたことや出来事
⑧4月からゴールデンウイーク終わりごろまでに大学や大学生活について考えていたことや出来事
⑨大学1年前期の間に大学や大学生活で考えていたことや出来事
⑩大学1年後期の間に大学生活について考えていたこと
⑪今現在の大学や大学生活について考えていること
⑫第一志望ではない大学に通うことに関して今現在ではどのような気持ちか
⑬志望校変更した時と1年生の終わりと現在までを振り返って考え方の変化や変わらないこと
3-2.倫理的配慮
研究協力は自由意志であり,随時中止ができること,守秘や個人情報,研究データの通り扱いについて文書と口頭で説明した。面接内容は調査協力者の許可を得てICレコーダーで録音し,逐語録を作成した。
3-3.分析方法
第一志望を諦め大学に適応するプロセスを明らかにするため,TEMを用いて分析を行った。荒川・安田・サトウ(2012)は,TEMは視点を増やしたり,理解を深めたりするための方法論であり,分析の方法により調べたいことを制限することはよくないと考え,TEMにはあえて決まった手順はないことを述べている。そこで本研究では,荒川ら(2012)の示す以下の手順を参考に分析を行う。
①インタビューデータを文字にする。
②文字データを意味のまとまりごとに切片化する。
③それぞれの対象者の経験を時間順に並べる。
④それぞれの対象者のTEM図を作成する。
⑤同じような経験を同じ列にそろえて,ラベルを考える。
⑥以下のTEM図の基礎概念を位置づける。
・等至点(Equifinality Point:EFP)多様な経験の経路がいったん収束する地点
・両極化した等至点(Polarized Equifinality Point:P-EFP)理論上対極に位置する等至点 価値づけを相対化し,経路の多様性が豊かに捉えられる
・分岐点(Bifurcation Point:BFP)ある選択によって各々の行為が多様に分かれていく地点
・必須通過点(Obligatory Passage Point:OPP)ある状況に至る上で必ず通るポイント
・社会的方向づけ(Social Direction:SD)等至点への個人の行動や選択に制約的・阻害的な影響を及ぼす力
・社会的助勢(Social Guidance:SG)等至点へのあり様を促したり助けたりする力
・可能な経路 インタビューでは得られなかったが,理論上通過すると考えられる行動や選択
・非可逆的時間 人間が時間と共にあることを表す概念
⑦個々人の変遷が十分追えるかを確認する。