方法


1.研究の対象


 各カップルの交際期間の長さにおいて,交際期間の短い事例から長い事例までいくつかの事例を対象とする考えから,3組のカップルに協力を得た。調査の時点での交際期間はそれぞれ,約1年,2年,6年と半年である。

2.研究の方法及び手続き


 それぞれのカップルに対し,半構造化インタビューを行った。会話は研究参与者の許可を得てボイスレコーダーで録音記録した。所要時間は一組につき約70分程度であった。

3.研究実施期間


 2021年10月下旬から11月中旬にかけて実施した。

4.質問内容


 事前に以下の質問を用意した。また,自由度を残した半構造化インタビューのため,調査対象者との自然な会話の流れを重視し,質問の表現や順序等は適宜変更した。項目は以下の通りである。 ①いつごろから付き合っていますか
②恋人同士になる前は友達同士でしたか
③LINEで連絡をとり始めたのはいつからですか
④会う頻度はどのくらいでしたか
⑤LINEトークでの連絡頻度はどのくらいでしたか
⑥LINEトークではどんなことを話しましたか
⑦絵文字の使用頻度はお互いにどのくらいでしたか
⑧絵文字をよく使う場面はありますか
⑨反対にあまり絵文字を使わない場面はありますか
⑩絵文字の有無や種類を決めるとき,どのようなことを考えますか
⑪LINE通話の使用頻度はどのくらいでしたか
⑫二人の関係を維持する上でLINEはどのような役割を果たすと思いますか
⑬二人の関係を維持する上で絵文字はどのような役割を果たすと思いますか
⑭友人に対して,絵文字はどのくらい使いますか


5.倫理的配慮


 インタビュー開始前に,研究目的と方法,インタビュー途中でも研究の協力を中止する権利があること,またボイスレコーダーで録音記録したデータについては研究終了後に完全に消去すること,研究として公表する際も対象者が特定できないように,個人名等は記号化(論文本文記載時は仮名で表記)すること,プライバシーの保護,匿名性と個人情報の守秘性を口頭及び文書をもって説明し,書面にて同意を得た。インタビューは各研究対象者が指定した場所で行った。

6.データ分析方法


 3組のインタビュー音声を逐語化し,そのテキストデータの中で時系列に沿って話された点を表に示した(Table1,Table3,Table5)。また,時系列に並べることは難しいが二人の関係性を検討するにあたって重要であると考えられる発話内容は話題ごとに表に示した(Table2,Table4,Table6)。 本研究では,テキストマイニングのために開発された解析ソフトウェアKH dorder (3.00d) を使用し,共起分析を行った。KH Coderは分析対象データに含まれている語を自動抽出し,恣意的になりうる操作を極力避けながらデータの様子を探ることができるため,分析者の予断を極力交えずにデータを要約・提示できるソフトであると考えられる(樋口,2011)。 本研究では,3組のカップルのインタビュー内容に対し,それぞれ単独で共起分析を行った(Figure1,Figure2,Figure3)。また,語の最小出現回数を3回に設定し,分析を行った。KH Coderに読み込ませるインタビューのテキストデータは,略語や若者言葉,方言,指示語を,内容が大きく変わることのないよう標準的な言い回しに書き換えたものを使用し,抽出に偏りがないよう配慮した。共起ネットワーク図においては,共起の程度が強いものが線で結ばれており,円が大きいほど抽出語の頻出数が大きく,色が濃いほど共起ネットワークの中心に位置する。


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