今後の課題


 本研究の課題としては,以下の点が挙げられる。

 まず,調査対象者が,地方国立大学という比較的課題先延ばしを行いづらいであろうものに限定された点についてである。本研究では良い先延ばしに着目して検討したため対象を絞ったが,対象者を大学生に広げ,先延ばしを行いやすい者が,どのような点に気を付けると先延ばしを行いづらいかなど,先延ばしを行いやすい者と行いづらいものの比較を行った上で,さらに深く性格特性と先延ばし意識,課題着手日との関連を検討する必要があると考えられる。

 また,自由記述でうまく課題をこなせた理由やコツを回答させた点についてである。うまく課題をこなせたコツだけでなく,課題を上手くできなかった,先延ばしをしてしまったなど,計画通りに出来なかった経験の理由を聞いた上で,どのような行動が先延ばしに悪い影響を与えているのか,逆に良い影響を与えているのかについて検討を行う必要があると考えられる。先延ばしを行いやすい人ほど課題着手に対して苦手意識を持っていると思われ,これらの人に対して先延ばしを行いづらい行動 の提案ができると考えられる。

 そして,課題の条件設定を細かくしなかったため,人それぞれ想定する課題が異なった点についてである。レポート課題という提示をしたため比較的個人での課題と捉えて回答をした者が多かった。Big5性格特性の「協調性」が高いと,周りの人やその時の状況に合わせたり対応できたりするため,個人の課題とグループでの課題の場合に,結果が大きく変わる可能性がある。そのため,課題の条件が個人でこなせる課題である場合と,グループでこなす課題の場合の課題着手日の比較についての検討が必要だろう。

 さらに,実践的にやって実際に改善が見られるような研究ではなかった点である。良くない先延ばしをしている人がどのようにすれば改善するのかという実際の手立てや,実際の改善案が見られるよう検討する必要があるだろう。