結果と考察
6-2.自由記述カテゴリーとBig5および先延ばし意識特性尺度の各下位尺度との一要因分散分析による検討
カテゴリー分けして特徴づけられた課題を上手くこなせた理由やコツが,Big5性格特性および先延ばし意識特性尺度と関連が見られるかを検討するために,自由記述のカテゴリーとBig5および先延ばし意識特性尺度において一要因分散分析を行った。カテゴリー内の人数が少なすぎると自由記述の11のカテゴリーの中で,7名以上あるカテゴリーを採用した。そのため,H:完璧を目指さない(2名),I:課題の質(3名),J:やっていない・ない(2名)を除いた計115名を対象とした。自由記述のA〜G,Kの8つのカテゴリーを独立変数,Big5および先延ばし意識特性尺度の各下位尺度を従属変数とした,1要因8水準の一要因分散分析を行った(Table10,11)。
その結果,Big5の下位尺度である「勤勉性」において1%水準,先延ばし意識特性尺度の下位尺度である「状況の楽観視」において5%水準,先延ばし意識特性尺度の下位尺度である「計画性」において1%水準で主効果が見られた(順にF(7,107)=2.949;p<.010,F(7,107)=2.584;p<.050,F(7,107)=2.904;p<.010)。
事後検定としてTukey法による多重比較を行った結果,Big5の下位尺度である「勤勉性」において,「B:隙間時間」と「G:睡眠時間を削る」との間に5%水準で有意差が見られた。「B:隙間時間」が「G:睡眠時間を削る」よりも,5%水準で有意に高い結果が得られた(Table10)。また先延ばし意識特性尺度の下位尺度である「計画性」においても,「B:隙間時間」と「G:睡眠時間を削る」との間に5%水準で有意差が見られた。「B:隙間時間」が「G:睡眠時間を削る」よりも,5%水準で有意に高い結果が得られた(Table11)。つまり,睡眠時間を削る人よりも隙間時間を上手に使う人の方が勤勉性や計画性が高かった。先延ばし意識特性尺度の下位尺度である「状況の楽観視」においては,自由記述のカテゴリーに対して主効果は出たものの,多重比較の結果いずれの間にも有意な差が見られなかった。
課題を上手くこなすコツとの関連については,Big5性格特性の勤勉性と先延ばし意識特性尺度の計画性から,自由記述の隙間時間と睡眠時間を削るに有意差が見られたため,勤勉性や計画性が高いと隙間時間を有効的に使って課題をこなすことができるが,勤勉性や計画性が低いと睡眠時間を削って徹夜などをして課題を行っているということが示された。
これらから,勤勉性が低く,状況の楽観視を生じやすいとどのような課題に対しても先延ばしをしてしまうと考えられる。また,神経症傾向が高く,先延ばし中に焦りや後ろめたさを感じやすいと,不安感から先延ばしを起こしづらいということが考えられる。そして気分の切り替えが上手く,計画を立てたり先の見通しを持って時間配分を決めて行動すると,隙間時間を効率的に使うことが出来るのに対し,課題があるような状況の中でもどうにかなるだろう,まだよいだろうと思ったり,見通しをもった行動をとらずにやることを把握できていなかったりすると,隙間時間を有効的に使えず最終的に睡眠時間を削って課題を行ったのだろうと考えられる。
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