本研究では,HSPの対人関係におけるストレスや抑うつ傾向と自己効力感に焦点を当て,HSPの心理的敏感さを後天的に補うためのブリーフセラピーを用いたプログラムを作成し,プログラムの効果の検討を行うことを目的とした。 本研究では大学生及び大学院生を対象に,HSPの心理的敏感さを後天的に補うためのブリーフセラピーを用いたプログラムを実施した。またプログラム実施前にHSPの質問紙調査を行い,プログラムの実施前後で自己効力感,抑うつについて尋ねた。HSPの質問紙調査については,Aron & Aron(1997)によって作成されたHSPSを高橋(2016)が日本語に翻訳したHighly Sensitive Person Scale 日本語版尺度(HSPS-J19)を用いた。自己効力感については坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度を用いた。抑うつについてはCES-D(The Center for Epidemiologic Studies for Depression Scale)の因子構造をもとに,蒲原・岡田・志渡(2009)によって作成されたうつ尺度CES-D簡易版を用いた。またブリーフセラピー用いたプログラムは,伊藤(2017)参考にしてコーピング・クエスチョンと,スケーリング・クエスチョンを用いたプログラムを実施した。 以上より,本研究のプログラムが自己効力感を向上させ,抑うつを低減させることでHSPの心理的敏感さを後天的に補うことができるかについて検討した。 調査の結果,HSP傾向に関わらず,プログラムが抑うつ,不安症状,満足感に影響が見られ,ブリーフセラピーを用いたプログラムが抑うつ感を低減させる効果を持つことが明らかとなった。よって本研究のプログラムはHSP傾向において,HSP低群の人,HSP高群の人どちらも対象とすることが可能なプログラムであると言える。次に,プログラムにおける自由記述において,失敗に対する不安,抑うつ感,不安症状,孤立感,満足感の時期に影響が見られた。また,抑うつにわずかな交互作用が見られたことから,ブリーフセラピー用いたプログラムの自由記述における文字数が多いほど抑うつ感を低減させる可能性を持つことが明らかとなった。本研究のプログラムは,HSPの傾向にかかわらず抑うつにおいて効果があり,プログラムの文字数においては自由記述の文字数が多い人に対して抑うつの効果があることが明らかとなった。そして本研究のプログラムの実施前後においてHSP傾向にかかわらず抑うつや自己効力感に影響を与えていたことから,このプログラムがHSP高群に特化して心理的敏感さを緩衝するものではないことが示唆された。