総合考察


 本研究では,現在の大学生、大学院生の過剰適応と内省の関連についてみながら,ストレス対処方略の違いで過剰適応と内省との関連にどのような違いがあるかについて,検討してきた.

 本研究の結果より,過剰適応とストレス対処方略、内省との間に関連がみられた.青年期前期用過剰適応尺度の「期待に沿う努力」、「人からよく思われたい欲求」は,自意識尺度の「公的自意識」に、「他者配慮」は、「私的自意識」に対して有意な正の影響がみられた.これより、他者からの評価的態度に敏感である過剰適応傾向の高い人ほど、他者からの叱責や価値の損失におびえるといった動機から、周囲に合わせようとする行動、他者の評価を考えた行動をとる傾向があることが示唆された。さらに、過剰適応の自己の内部に感情を蓄積させる傾向から、その自分の欲求や感情を振り返る内省を行うことも示唆された。
 さらに、本研究では、5つの媒介モデルが成立し、その根拠として、自己の内面への適応が重要であることが明らかになった。媒介モデルの成立に関して、自己をどのように捉えているかがストレス対処方略にも、内省にも関わっていることが示唆された。心理的に満足していない、安定していない「内的適応」が不十分な場合、課題解決へ向かった対処方略を採用することができず、ネガティブな反すうにつながる恐れがある。しかし、原因を検討し,解決のための計画を練るストレス対処方略を採用した場合、自己を課題解決のために振り返り、改善にむかうことができることが示唆された。
最後に、本研究では、内省のマイナスな側面に注目し、内省を控えるべきであるという立場に立った研究を実施した。しかし、自己を振り返る行為への動機はさまざまあり、一概に控えるべきものであると言えないことがわかった。