結果


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1)音楽聴取前後の感情変化

2)音楽感情価と聴取後の感情状態

音楽の感情的性質について

音楽聴取後の感情的変化について

3)聴取音楽と記憶テスト

 

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1)音楽聴取前後の感情変化

不快感情測定質問紙の因子分析の結果、敵意、驚愕、抑鬱不安の3因子が抽出された。それぞれ、分散分析を行った。敵意前後変化は、被験者内において、音楽と性別の交互作用が認められた(F(2,54)=3.207,P<.05)。被験者間においては、 F(2,54)=7.195,P<.05で音楽の主効果が認められた。驚愕前後変化は、被験者内において、音楽と性別の交互作用が認められ(F(2,54)=4.014、P<.05)、被験者間においては、性別によって異なる傾向がある(F(1,54)=3.451、P<.10)。抑鬱不安前後変化は、被験者内において、音楽と性別で交互作用が認められた(F(2,54)=7.551、P<.05)、被験者間においては、音楽の主効果がみられた(F(2,54)=6.567、P<.05)。3因子ともに、 教示による差は認められなかった。

 

▲Fig1ー1女子敵意の前後変化

 

▲Fig1ー2男子敵意の前後変化

▲Fig2ー1女子驚愕の前後変化

▲Fig2ー2男子驚愕の前後変化

▲Fig3ー1女子抑鬱不安の前後変化

▲Fig3ー2男子抑鬱不安の前後変化

この結果からは、音楽聴取にともない、不快感情が解消されているといえよう。また、HAPPY音楽は不快感情の3つすべてを見事に低減させていることから、一時的に不快感情を低減するにはHAPPY音楽が効果的であろう。また、音楽聴取による不快感情の変化は、聴取音楽の感情価や性差によって異なる傾向がわかった(女性はHAPPY音楽で抑鬱不安大幅低減するが、男性には顕著ではない。男性はヒーリング音楽で大幅低減)。

 

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2)音楽感情価と聴取後の感情状態

音楽作品の感情価(AVSM)

因子分析の結果5因子が抽出され、抽出された因子ごとに得点を算出し、分散分析を行った。いとしさ因子は、被験者間で、音楽の主効果がみられた(F(2、54)=3.898、P<.05)。音楽で多重比較を行ったところ、 ヒーリングは、SADやHAPPYよりも得点が低く、いとしさ得点が低い音楽であるといえる。教示には、有意な差は認められなかった。力強さ因子は、音楽、性別、教示ともに、有意な差は認められなかった。 優しさ因子では、音楽と性別の交互作用がみられた(F(2、54)=4.316、P<.05)が教示による有意な差は見られなかった。気高さ因子は、音楽の主効果がみられた(F(2、54)=23.310、P<.05)。音楽で多重比較を行ったところ、ヒーリングが一番得点が高く、SADが次に高く、HAPPYはもっとも低かった。教示による有意な差はみられなかった。高揚因子では、音楽と性別の交互作用が見られた(F(2、54)=3.909、P<.05)。教示による有意な差はみられなかった。

▲Fig4ー1音楽の感情的性質

 

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音楽聴取後感情変化(MMS)

因子分析で9因子が抽出され、抽出された因子ごとに得点を出し、分散分析を行った。 無気力因子は、音楽の主効果が認められた(F(2、54)=7.764、P<.05)。恋しさ因子は、音楽による差は、F(2、54)=2.481、P<.10で有意な差は認められないが、音楽によって異なる傾向がある。丁寧因子は、音楽の主効果がF(2、54)=3.949、P<.05で認められた。倦怠感因子は、 音楽の主効果がみられた(F(2、54)=5.764、P<.05)。敵意因子は、音楽の主効果が見られた(F(2、54)=6.583、P<.05)。くつろぎ因子では、音楽と性別の交互作用がみられた(F(2、54)=3.491、P<.05)。 不安因子は、音楽の主効果が見られた(F(2、54)=9.185、P<.05)。動揺因子は、性別で異なる傾向がみられる(F(1、54)=3.396、P<.10)。快感情因子では、音楽の主効果がみられた(F(2、54)=37.789、P<.05)。また教示と性別の交互作用の傾向もみられた(F(1、54)=3.639、P<.10)。

 

▲Fig4ー2音楽聴取後の感情的変化

 この結果からは、SAD音楽、HAPPY音楽、ヒーリング音楽のそれぞれが表現する感情価は異なるといえよう。また、音楽の感情価を判断する上で、「高揚」、「優しさ」の感じ方が男女で異なる傾向があるといえよう。聴取する音楽が同じでも、性差によって判断が異なる点が興味深い。そして音楽聴取後の感情は、聴取音楽にともなった、感情の変化をするといえよう。HAPPY音楽聴取後はもっとも快感情が高まりやすく、ヒーリング音楽は、無気力、倦怠、不安や動揺を、他の音楽よりも低めはしない。男性は、SAD音楽で快感情を、女性はHAPPY音楽で快感情を感じる傾向がある。

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3)聴取音楽と記憶テスト

記憶テストの問題は全7項目である。それぞれについて、正解に1点、不正解に0点を与え、分散分析を行った。テスト得点には、音楽の主効果がみられ(F(2、56)=4.289、P<.05)、性別、教示による有意な差はみられなかった。

 

▲Fig5聴取音楽と記憶テスト成績

HAPPY音楽を聴取した人は、もっとも記憶テストの成績が悪く、SAD音楽またはヒーリング音楽を聴取した人は、成績が良かった。テストの成績は、ヒーリング音楽、SAD音楽、HAPPY音楽の順に良かった。記憶テスト、記憶の再生は、音楽聴取の影響を受けているといえる。この結果は、学習または再生時のムード状態と、学習されるもの、再生されるものの感情的なものが一致すると学習率、再生率が高まるという「ムード一致効果」(Isen et al.,1978;Bower et al.,1981;Bower,1981)と同様の結果であるといえよう。また、ある感情的変化が生起することによって、記憶がそれに伴った変化しており、SADな感情は、SADな内容のもの(ノード)と結合した判断をしやすいという感情ネットワークモデルを示唆しているともいえよう。また、Forgas(1998)のGOOD moodにおいてFAE(基本的帰属エラー)が起こりやすいという報告も示唆しているといえる。つまりGOOD moodは、複雑な認知処理がされにくくなり、ヒューリスティック型、トップダウン認知処理をしてしまうために、間違った判断をしてしまうということである。

この結果も示しているように、ある感情が喚起されると、人間はその感情に合う情報処理を行っていると考えられる。感情の変化は、判断や、記憶再生等の、ひとつの手がかりとなっていると考えられるだろう。

 

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