第U章 「教育愛」の定義
  第2節 シュプランガーの「教育愛」  


エデュアルト・シュプランガー(Spranger,Eduard 1882-1963

  

 ドイツの哲学者で、ベルリン大学でディルタイからは精神科学的解釈学を、パウルゼンからは教育と文化の不可分の関係を学ぶ。彼の主著は『生の諸形式』であり、その『生の諸形式』は、「ディルタイの精神科学的な思惟方法を基調」 として、ひとつひとつの事象を解明することよりも、それら事象と事象との連関に重点をおいた「生の類型論」 を築いたものである。その中で人間には目的・目標とする”価値”あるものが必要であり、それを目指す精神生活があると述べ、”価値”や”精神生活”の重要性を主張している。どの”価値”を強く志向するかで、人間のタイプは異なるが、彼はそれを6つのタイプ「理論的人間、経済的人間、美的人間、社会的人間、権力的人間、宗教的人間」に分けている。そして、「文化を創造していく力を養うこと=教育」と位置づけていることより、文化と教育が結びつけ、教育者を愛の価値を志向する社会的類型に属するとした。また、教育の歴史の中で、愛を根本基調として教育を語ったプラトンやペスタロッチを例に挙げ、教育が愛を媒介としている時の、まさしくこの時の愛を「教育愛」と名付けた。その他に、ペスタロッチ研究で成果を挙げたり、日本の玉川大学に来たりしている。

  


【シュプランガーの教育愛】


 第U章第1節で愛を見た上で、第U章第2節ではシュプランガー自身が教育愛をどのように考えていたかを文献から読み取った。

 教育愛とは…

 シュプランガーは教育愛を「教育者が教育し努力する時に、教育者に向上と貫徹への情熱を与えるもの」と推測し、教育者に存在するものだという。また、それは「生長過程にある心、および未発達の価値可能性」に向けられ、それと同時にそこから教育者が純粋かつ豊かにこの可能性の中から生み出そうとしている「生命の客観的意義および価値」に向けられているとした。さらに、教育愛の方向性に4つの特徴を見い出したのである。


 教育愛の4つの特徴…

    @他人を育て上げようとする―要請する愛

    A成長する人間に与えられている可能性に向けられる

    B自然な生命や精神的な生命のすべてが従っている

       ―それぞれきわめて異なった―

     法則を認識するように穏やかに導くこと

    C愛として芽生えることのできる種子を愛を持って蒔くこと

 シュプランガーの教育愛には、第U章第1節で述べた愛(エロス・アガペ)の要素が含まれていると考える。@はエロス的でありCはアガペ的といえるのではないだろうか。  

 

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