いずれ社会に出て働くことになるであろう大学生は、その近い将来について、どのように考えているのであろうか。
本研究では、大学生の職業意意識について、「職業継続意志」という視点を取り上げ、これと「仕事に対する価値観」、及び「社会的欲求」との関連を測った。
特に、女性は、「男は仕事、女は家庭」といった伝統的な性役割観や結婚・出産・妊娠・育児など、周囲の環境の変化や女性特有のライフイベントによって、仕事を続けていくことが困難な状況に立たされることが多い。それ故、仕事は結婚までの“つなぎ”と考え、将来は「専業主婦」を希望する者もいる。一方、たとえ結婚や妊娠・出産・育児などの場面に遭遇したとしてもずっと働き続けていきたいと考える、いわゆる「キャリア・ウーマン」を目指す者もいるのである。果たして、両者の違いは何なのであろうか。言い換えれば、一体何が「職業継続意志」に影響するのであろうか。「伝統的な性役割観」が大きく関与してくることは過去の研究(若林ら,1981;鹿内ら,1982;若林ら,1983)からも明らかである。そこで、本研究においては、「仕事に対する価値観」と「社会的欲求」という二つの側面からこれをみていくことにした。
本研究の目的は次の通りである。
1;個人が仕事に対してどのような側面に価値をおいてみているかという点から、「職業継続意志」との関連を測る。
2;個人の特性を「社会的欲求」という視点から捉え、これと「職業継続意志」との関連を測る。
なお、本研究では、「社会的欲求」として、「承認欲求」と「達成動機」を取り上げた。
また、「職業継続意志」と「仕事」については、以下のように定義した。
・「職業継続意志」の定義
本研究においては、結婚・出産・育児というライフイベントに出会った際にも仕事を続けていくつもり(意志)があることを「職業継続意志」と定義付けた。
・「仕事」の定義
本研究では、「仕事」を「家庭」とは対極にあるものとして位置付けて考え、「仕事」とは、家庭外に出て、社会に向けたサービス(労働)を行うことによって、金銭的報酬を得るものである、と定義した。