①印象評定（特性形容詞対尺度）
ⅰ）活動性
笑顔表出条件ごとに認知的熟慮性－衝動性の単純効果の検定を行ったところ、初期笑顔表出条件では熟慮群＜衝動群の間に有意差が見られ（F(1,45)=4.23, p＜0.05）、終期笑顔表出条件では衝動群≦熟慮群の間に有意傾向が見られた（F(1,43)=2.99, p＜0.10)。初期笑顔群と終期笑顔群の間において、笑顔表出×認知的熟慮性－衝動性の交互作用が見られた。また、熟慮群、衝動群それぞれにおいて笑顔表出の単純効果の検定を行ったところ、いずれも有意であった（それぞれF(2,70)=20.91, p＜0.05、F(2,62)＝22.48, p＜0.05）。それぞれTukey HSDの多重比較を行ったところ、熟慮群では統制群＜初期笑顔表出群、統制群＜終期笑顔表出群の間に有意差（それぞれp＜0.05）が見られ、初期笑顔表出群≦終期笑顔表出群の間に有意傾向（p＜0.10）が見られた。また、衝動群では統制群＜初期笑顔表出群、統制群＜終期笑顔表出群の間に有意差（p＜0.05）が見られた。（Fig.3参照）これらのことから、初期笑顔表出条件では熟慮群よりも衝動群の方が刺激人物に対してよりポジティブな印象を抱いていたが、終期笑顔表出条件においては衝動群よりも熟慮群の方が刺激人物によりポジティブな印象を抱く傾向にあったことが示された。また、熟慮群、衝動群ともに笑顔表出のない場合に比べてある場合の方が刺激人物に対してよりポジティブな印象を抱く、ということが示された。さらに、熟慮群においては、初期に笑顔を表出した場合よりも終期に笑顔を表出したときの方がよりポジティブな印象を抱く傾向にあることが示された。
ⅱ）個人的好ましさ
認知的熟慮群、衝動群それぞれにおいて笑顔表出の単純効果の検定を行ったところ、熟慮群で有意差が認められた（F(2,70)=4.13, p＜0.05）。熟慮群についてのTukey HSDによる多重比較の結果、統制群＜終期笑顔表出条件、初期笑顔表出群＜終期笑顔表出群の間に有意差（p＜0.05）が見られた。さらに、笑顔表出条件ごとに認知的熟慮性－衝動性の単純効果の検定を行ったところ、有意な差は認められなかった。（Fig.6参照）このことから、熟慮群においては、笑顔表出のない場合や初期に笑顔を表出した場合よりも、終期に笑顔を表出した場合の方がよりポジティブな印象を抱かれることが示されたが、衝動群については有意な効果は全く見られなかった。
②好意度評定（対人魅力尺度）
ⅰ）協同・交遊
認知的熟慮群、衝動群それぞれについて笑顔表出の単純効果の検定を行ったところ、熟慮群において有意差が見られた（F(2,70)=3.22, p＜0.05）。熟慮群においてTukey HSDの多重比較を行った結果、統制群＜終期笑顔表出群間に有意な効果（p＜0.05）が認められた。また、笑顔表出条件ごとに認知的熟慮性－衝動性の単純効果の検定を行ったところ、有意な差は認められなかった。（Fig.9参照）このことから、熟慮群においては、笑顔表出のない場合よりも終期に笑顔を表出した場合の方が好意度が高くなることが示されたが、衝動群については、笑顔表出による有意な効果が全く見られなかった。
ⅱ）親密・承認
認知的熟慮群、衝動群それぞれについて笑顔表出の単純効果の検定を行ったところ、両群ともに有意な差が見られた（それぞれF(2,70)=6.03, p＜0.05、F(2,62)=7.97, p＜0.05）。その後両群それぞれにおいてTukey HSDの多重比較を行ったところ、熟慮群においては統制群＜終期笑顔表出群の間に有意な効果（p＜0.05）が認められ、初期笑顔表出群≦終期笑顔表出群の間に有意傾向（p＜0.10）が見られた。また、衝動群においては統制群＜初期笑顔表出群、統制群＜終期笑顔表出群の間に有意な効果（p＜0.05）が認められた。さらに、笑顔表出条件ごとに認知的熟慮性－衝動性の単純効果の検定を行ったところ、有意な差は認められなかった。（Fig.12参照）これらのことから、熟慮群、衝動群ともに笑顔表出のない場合よりも終期に笑顔を表出した場合の方が好意度がより高くなることが示された。さらに、熟慮群においては、初期に笑顔を表出した場合よりも終期に笑顔を表出した場合の方が好意度が高くなる傾向が見られ、衝動群においては、笑顔表出のない場合よりも初期に笑顔を表出した場合の方が好意度が高くなることが示された。
