予備調査

 3名の刺激人物(以下SP)のうち、本実験で使用する刺激として最も妥当な1名のSPを選び出す目的で予備調査を行った。

方法
1)被験者
 大学生34名(男性18名、女性16名)。

2)刺激人物(以下、SP)のビデオテープの構成
 三重大学4年生の女性3名がそれぞれ、自己紹介をする内容のVTRに出演した。
 自己紹介の内容は、ユーモアを全く含まない自己紹介(以下、統制VTR)、遊戯的ユーモアを少量含む自己紹介(以下、遊戯的ユーモア少量VTR)、遊戯的ユーモアを多量含む自己紹介(以下、遊戯的ユーモア多量VTR)、攻撃的ユーモアを少量含む自己紹介(以下、攻撃的ユーモア少量VTR)、攻撃的ユーモアを多量含む自己紹介(以下、攻撃的ユーモア多量VTR)の計5種類である。なお、ユーモアの量は、ユーモア少量群には1刺激、ユーモア多量群には5刺激挿入することにより操作した。
 ユーモアの内容5種類とSP3名をそれぞれ組み合わせた15種類のVTRを、各被験者が評定する自己紹介の内容が重複しないように、また順序効果を考慮してカウンターバランスをとり、全15本作成し、SPのビデオテープとした。

3)質問紙の構成
尺度1「遊戯的ユーモア尺度」
 「この人のユーモアは明るく楽しい」、「このユーモアは単純で分かりやすい」など、上野(2003)が示す遊戯的ユーモアの特徴を踏まえて作成した5項目。

尺度2「攻撃的ユーモア尺度」
 「この人のユーモアは多少毒がある」、「この人のユーモアは人を傷つける」など、上野(2003)が示す攻撃的ユーモアの特徴を踏まえて作成した5項目。

 この2尺度以外に、「この人のユーモアはおもしろい」という項目を加えた。5つのVTRそれぞれについて、2尺度と1項目を合わせた計11項目について1(全くそう感じない)から5(非常にそう感じる)までの5段階で評定させた。

4)実験手続き
 被験者は、「ユーモアについての研究であり、ビデオを見てもらって、印象を評定してもらう」という名目で参加した。また実験にあたり、ビデオテープを見ている間と質問紙に記入している間は声を出さないように教示した。実験は約15分で行われた。

 実験場面
 他人の影響を受けない条件のもとで行われた。被験者は1名または2名が同時にビデオテープを見た。2名で見た場合には被験者の間に仕切りが立てられており、互いの反応が見えないようになっていた。

 SPビデオテープの呈示
 実験者は被験者の左後ろで待機し、ビデオデッキを操作する際にはビデオデッキの側に移動して操作した。

 質問紙の記入
 SPのVTRを1つ見終せわったところでビデオテープを止め、そのSPが表出したユーモアについて評定させた。被験者全員の評定が終わったところで再度ビデオテープを流し、次のSPのVTRを見せるというように、ビデオテープの呈示と評定を繰り返して質問紙に記入させた。

 デブリーフィング
 被験者全員が5つ目のSPのVTRに対する評定を終えたところで、実験の真の目的を被験者に伝え、実験を終了した。

結果
1)分析対象について
 同時にビデオテープを見た被験者のグループの中で一人でも実験中に声を出して笑った被験者がいるグループについては、同調行動によって評定に影響があった可能性があるため、分析対象から除外した。結果として、分析対象となったのは30名(男性15名、女性15名)であった。また、分析の際は被験者間要因と見なして検定を行った。

2)ユーモアの量要因について
 いずれのSPにおいても、遊戯的ユーモア少量VTRよりも攻撃的ユーモア少量VTRの方が遊戯的ユーモア得点が高く、また攻撃的ユーモア少量VTRにおいては攻撃的ユーモア得点よりも遊戯的ユーモア得点の方が高いなど、刺激としての妥当性がないと判断したため、遊戯的ユーモア少量VTRと攻撃的ユーモア少量VTRは本実験において用いないこととした。以下、ユーモアの量要因をなくし、遊戯的ユーモア多量VTRを遊戯的ユーモア刺激、攻撃的ユーモア多量VTRを攻撃的ユーモア刺激、統制VTRを統制刺激として扱う。

3)SPについて
 3名のSPのうち、本実験で使用する刺激として最も妥当な1名のSPを選び出した。以下はそのSPについての結果である。

4)遊戯的ユーモア尺度について
 信頼性の低い1項目(「この人はふざけている」)を削除し、残り4項目(α=.91)の平均値を遊戯的ユーモア得点とした。
ユーモアの種類(3水準)の1要因分散分析を行ったところ有意であったため(F(2,27)=8.54, p<.01)、TukeyのHSD法による多重比較を行った。遊戯的ユーモア刺激と統制刺激(p<.01)、遊戯的ユーモア刺激と攻撃的ユーモア刺激(p<.05)にそれぞれ有意差がみられ、統制刺激と攻撃的ユーモア刺激には有意差がみられなかった。つまり、遊戯的ユーモア刺激は他の2つの刺激よりも遊戯的ユーモア得点が高く、他の2つの刺激の間には遊戯的ユーモア得点に差がみられなかった。これらのことから、遊戯的ユーモア刺激は妥当であると考えられる。

5)攻撃的ユーモア尺度について
 5項目(α=.95)の平均値を攻撃的ユーモア得点とし、ユーモアの種類(3水準)の1要因分散分析を行ったところ有意であったため((F(2,27)=109.08, p<.01)、TukeyのHSD法による多重比較を行った。攻撃的ユーモア刺激と統制刺激、攻撃的ユーモア刺激と遊戯的ユーモア刺激に有意差がみられ(ともにp<.01)、統制刺激と遊戯的ユーモア刺激には有意差がみられなかった。つまり、攻撃的ユーモア刺激は他の2つの刺激よりも攻撃的ユーモア得点が高く、他の2つの刺激の間には攻撃的ユーモア得点に差がみられなかった。これらのことから、攻撃的ユーモア刺激は妥当であると考えられる。

6)刺激のおもしろさについて
 「この人のユーモアはおもしろい」という項目の平均値をおもしろさ得点として、ユーモアの種類(3水準)の1要因分散分析を行ったところ有意であったため(F(2,27)=11.37, p<.01)、TukeyのHSD法による多重比較を行った。遊戯的ユーモア刺激と統制刺激、攻撃的ユーモア刺激と統制刺激に有意差がみられ(p<.01)、遊戯的ユーモア刺激と攻撃的ユーモア刺激には有意差がみられなかった。つまり、遊戯的ユーモア刺激と攻撃的ユーモア刺激は統制刺激よりもおもしろく、これら2つの刺激の間におもしろさの差はなかったと考えられる。



修正仮説
 予備調査の結果を受けて、修正仮説を立てた。本実験は以下の仮説を検証することを目的とする。

仮説1  遊戯的ユーモア表出を含んだVTRが最もポジティブな印象を持たれ、攻撃的ユーモア表出を含んだVTRが最もネガティブな印象を持たれる。

仮説2  世代により、ユーモアの種類によって表出の受け入れられ方に違いが出る。


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