U.研究1(予備調査)


1.目的
 教師がSCと連携して生徒支援を推進していくために、具体的にどのようなことをしているのかを把握すると共に、現時点でのSC配置による学校への効果、出てきた問題を把握することを目的とする。また、これらは、本調査に使用する質問紙の作成を目的として行われた。

2.方法
 調査対象者  県内のSCの配置されている5校の中学校の教師13名
 調査内容   質問内容は以下に示す5項目。自由記述による回答。
  【1】 教師とSCの連携に関するもの
   (1)SCと連携して生徒支援を推進していくために、教師自身がしていること
   (2)SCと連携して生徒支援を推進していくために、教師自身の学校や他の教師がしていること
   (3)SCと連携して生徒支援を推進していく上で考えられる問題点や改善点
  【2】 SC配置による変化に関するもの
   (1)SCが配置されたことにより良かった点、改善された点、うまくいった点
   (2)SCが配置されたことにより出てきた問題点や改善点

3.結果と考察
  質問紙により得られた項目を、質問項目ごとにKJ法にて分類、カテゴリ分けを行った。
 【1】 教師とSCの連携に関するもの
 「(1)SCと連携して生徒支援を推進していくために、教師自身がしていること」を分類整理したところ、「組織的活動」「個別の接触」「調整」の3要因が見出された。
 次に、「(2)SCと連携して生徒支援を推進していくために、教師自身の学校や他の教師がしていること」を分類整理したところ、(1)と同様に、「組織的活動」「個別の接触」「調整」の3要因が見出された。
 「組織的活動」とは主に、生徒支援組織による活動であり、特定のメンバーで構成されたチームによる活動である。そこでの相互コンサルテーションをもとに、その他の教師も支援活動を進めていることが見出された。
 「個別の接触」には、個別のコンサルテーション、生徒の状況についての情報交換、普段のコミュニケーション、といった要因が見出され、支援組織による活動とは異なり、個々の教師がSCと接触をとり連携を進めていることが示された。
 「(3)SCと連携して生徒支援を推進していく上で考えられる問題点や改善点」を分類整理したところ、「SCの勤務形態による活動の困難さ」「支援体制の確立」「教師、SCがお互いに働きかけること」「SC,教師相談に対する周囲の理解」の4要因が見出された。つまり、現在における連携上の問題とは、SCの勤務形態が活動を困難にさせていること、支援体制が十分ではないこと、教師とSCのコミュニケーションが不十分であること、そして、SC・教育相談に対する理解が不十分であること、であるといえよう。

 【2】 SC配置による変化に関するもの
 「(1)SCが配置されたことにより良かった点、改善された点、うまくいった点」について、分類整理、カテゴリ分けしたところ、「生徒への援助」「保護者への援助」「教師への援助」「協働」の4要因が見出された。また、「生徒への援助」の回答としては、不登校生徒への対応に関するものが大半を占めた。
 次に、「(2)SCが配置されたことによって出てきた問題点や改善点」を分類、カテゴリ分けしたところ、「SCが活用しきれていない」「支援体制の確立」「教師の教育相談に対する理解」「教師・SCがお互いに働きかけること」の4要因が見出された。これらの問題点や改善点はこれまでにも指摘されてきた事柄に関する記述がほとんどであり、SCの勤務形態に関する問題や支援体制のあり方はSCと連携した生徒支援を推進していく上で、欠くことのできない問題だといえよう。

 ところで、各学校はそれぞれの現場のニーズに合わせてSCと連携し、生徒支援を推進しているのであり、調査校及び調査対象者数が少ないことから、全ての中学校において同様の連携をはかっているとは一概には言えない。しかし、SCとの連携にあたっては、個々の関わりだけではなく、コーディネーターの存在やシステムの構築が必要であることはこれまでにも指摘されている(石隈、1999 ; 村山、1999など)ことであり、ある程度、他の中学校にも反映させることが可能であると考え、これらの結果をもとに本調査で用いる尺度を作成した。