W.まとめと今後の課題

 本研究では、まず、自由記述で得た、SC及びSC事業に対する要望をKJ法により分類し、教師のニーズの把握を試みた。その結果から、教師とSCの連携に注目し、研究を進めた。そこで、教師がSCと連携して生徒支援を推進していくためにしていること、及びSC配置により教師はどのような変化を感じているのか実態の把握を試みた。その結果、教師はSCと連携して生徒支援を推進していくためにしていることとして、「組織的活動」「個々の接触」「調整」の3要因が見出された。また、連携上の問題として「SCの勤務形態による活動の困難さ」「支援体制の確立」「教師、SCがお互いに働きかけること」「SC・教育相談に対する周囲の理解」の4要因が見出された。さらに、SC配置による変化として、良かった点、改善された点、うまく行った点は「生徒への援助」「保護者への援助」「教師への援助」「協働」の4要因が、問題点・改善点としては「SCを活用しきれていない」「支援体制の確立」「教師の教育相談に対する理解」「教師・SCがお互いに働きかけること」の4要因が見出された。
 次に、予備調査の結果をもとに作成された質問紙をSCが配置されている中学校の教師を対象に行い、得られた回答を因子分析により検討した。その結果、学校の連携状況として「教師とSCの良好な関係」「学校の支援体制」「教師の教育相談への関心」「SCの積極的な活動」の4因子が抽出された。
 さらに、「学校の連携状況」「教師の意識・態度」「SC配置による効果」「連携上の問題」について、性別、役職、教職経験年数別、同じSCの継続配置の有無により比較したところ、特に、同じSCの継続配置の有無によりその差が顕著にあらわれた。
 また、SC配置による効果は「教師の意識・態度」及び「学校の連携状況」の各下位尺度得点の中でも〈教師とSCの良好な関係〉の影響が大きいことが示唆された。これらの結果から、SCとしての良さが活かされるためには、単にSCが学校に派遣されさえすればよいというわけではなく、SCと教師がお互いにSCの役割やその学校での生徒支援のあり方について共通理解を図り、その機能が十分に発揮できるような環境の整備に向けて、協力し合う必要があるといえるだろう。

 今後の課題としては、尺度がすべて新たに作成されたものであり、信頼性の一部としてα係数を扱ったに過ぎず、信頼性と妥当性には疑問が残る点があげられる。今後の研究では、さらなる信頼性、妥当性の検討がなされる必要がある。
 
 


[謝辞]
 本研究を進めるにあたり、調査にご協力くださいました各中学校の先生方に深く感謝いたします。この場をおかりして、心よりお礼申し上げます。