結果と考察



1.各尺度の因子分析結果

 友人関係尺度:友人と一緒にいて楽しむ事を重視しているつきあい方である「群れ」的なつきあい方、友人に対して気を遣って接しているつきあい方である「気遣い」的なつきあい方、友人に合わせることを重視しているつきあい方である「同調」的なつきあい方の3つの因子を抽出した。

 学校生活適応感尺度:学習意欲、教師関係、進路意識の3つの因子を抽出した。

 アイデンティティ尺度:アイデンティティの確立因子1因子を抽出した。



2.友人とのつきあい方について

 友人関係尺度の因子分析の結果、「群れ」的なつきあい方、「気遣い」的なつきあい方、「同調」的なつきあい方の3つのつきあい方を見出すことができた。

中学生にとって、友人とはつきあっていく中で、お互いに変化することを求めるような関係ではなく、ひとりぼっちになることを恐れているため、自分に合わない人ともつきあう、一緒にいる仲間としての存在であると考えることができる。一緒に行動することで共に楽しく過ごそうとする関係を中学校段階で経験することにより、多くの友人とつきあうことができる。このような段階を経てこそ、自分にとって大切な友人をみつけていくことができるのではないだろうか。中学校段階で自分とは合わないかもしれないと感じる友人も含む多くの人と付き合う経験をすることで、自分とはどういう人間か、自分と合うのはどのような人か、といったことを知っていくのではないだろうか。このような点から、中学生時に多くの友人と群れ的なつきあいをすることの大切さが理解できると思われる。



3.友人とのつきあい方と学校生活の適応感、アイデンティティの確立の関連について

(1)友人とのつきあい方と学校生活適応感について

 友人とのつきあい方と学校生活適応感の関係は、群れ的なつきあい方をする傾向と、教師とのかかわりの多さ、進路意識の高さ、適応感全体の高さと関連していることがわかった。 学習意欲とは関連がみられなかった。

これは、群れ的なつきあい方が中学生によく見られるつきあい方であり、協調行動の側面が大きい交友活動の経験は、他者との関係における自己評価の基盤となり、またそうした自己評価を持つことが、他者との協調行動に対する肯定的な構えにつながるとされているという先行研究を支持するものであり(藤田・伊藤・坂口,1996)、中学生にとって、友だちと一緒に楽しく過ごし、多くの友人とつきあうことが学校生活を充実したものとするために重要であると考えられる。

(2)アイデンティティの確立の程度との関連について

 アイデンティティの確立の程度との関連は、アイデンティティ確立の程度が高いと、群れ的なつきあい方をする傾向の高さは、進路意識の高さに関連していることがわかった。

そして、アイデンティティ確立の程度が低いと、群れ的なつきあい方をする傾向の高さは、教師とかかわりを多く持っていることと関連していることがわかった。 また、同調的なつきあい方をする傾向の高さは、学習意欲の高さと関連があることが考えられる。

(3)性差について

男子は、群れ的なつきあい方をする傾向の高さと教師とかかわりを多く持っている程度の高さ、進路意識の高さ、適応感全体の高さとが関連していることが示された。 また、同調的なつきあい方をする傾向の高さと進路意識の低さが関連していることも示された。

女子は、友人とのつきあい方と学校生活適応感の間に有意な関連はみられなかったものの、群れ的なつきあい方をする傾向の高さと、教師とのかかわりの高さ、進路意識の高さ、適応感全体の高さはかかわりのあることが考えられる結果となった。

この結果から、男子の方が女子よりも、友人とのつきあい方と、学校生活の適応感との関連が高いことが分かった。女子は友人とのつきあいで、友人との間で親密で自分たちだけの世界を持つ傾向があることがわかっている(榎本,1999)ことから、女子は男子ほど本研究で適応感として捉えている学習意欲や教師との関係、進路意識を友人関係とかかわりのあるものとして感じていない可能性が考えられる。







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